1967年初出 赤塚不二雄
竹書房文庫 全21巻
ギャグマンガの祖にして大看板、赤塚先生の代表作とも言えるシリーズですが、実は天才バカボンで笑ったことが私は一度もありません。
ほんとにバカだ、と呆れるんですけど、それがどうしても笑いの感情につながらない。
笑える、というより、一体どこまでエスカレートしていくのだこのマンガは、という怖さの方が感覚としては先立っていたように思う。
おそらく私が本作で笑えない要因は天才バカボンの登場人物すべてが、すべからく狂ってることに端を発してるように思います。
まともな人間が1人も出てこないのですよ、このマンガって。
バカボンは愚鈍ですっとぼけてるし。
バカボンのオヤジははなから狂ってるし。
ハジメちゃんは天才赤ん坊という異形だし。
バカボンのママはあのオヤジと結婚するという正気のなさだ。
ツッコミ不在。
キャラクターがオールボケのままボケがボケを自乗してスパイラル状態。
いや、この渦の深さ、底しれなさは尋常じゃないと思います。
私がバカボンを凄いと思うのはこの1点につきる。
ボケだけでどんどんシュールに狂っていく異形のホームドラマ、それが私にとってのバカボン。
ギャグマンガというより、妙に実験的で、ナンセンスの極みを行く金字塔的作品、と言うのが私の位置付けですね。
中盤ぐらいの巻が一番狂ってます。
余談ですが、私の友人は私が貸した本作全巻を読んで、頭がおかしくなりそうになったので途中で読むのをやめた、と言っておりました。
テレビアニメとはどこか別物ですね。
アニメは上手に毒抜きして狂気をちらつかせないよう配慮していたように思います。
そりゃこんな漫画描いてたら心身を削られるわ、と思います。
国民的大ヒット作にして異形の一作。
誰にもマネできないことだけは確かでしょう。
コメント
[…] ある種天才バカボンにも通底するか、と思ったり。 […]
[…] どことなく天才バカボンや、古谷三敏の諸作を思い起こさせる家族ものギャグなんですが、そこはまあ山上たつひこなんで、飛ばしっぷりが半端じゃありません。 […]