1963年初出 手塚治虫
SFマガジンに連載された短編を集めた一冊。
日本の活字SFがようやく認知されだした頃のSFマガジンとあって、先生も気合いが入っていたのか、うるさい読者の目線を意識した大人向けのSFを描いてらっしゃいます。
たわいない、といえばたわいない短編ではあるんですが、所詮漫画だから、といった蔑視をよせつけまい、とする意欲を作品に感じます。
SFマガジンの初代編集長だった福島正美氏はひどくマンガに対して差別的だったらしく、その偏見に対して一矢報いたい気持ちも少しはあったのではないでしょうか。
しかし「当時はSF漫画なんてアウトサイダーだった」とのあとがきには大変驚かされました。
後進へと続く道をこうして先生が切り開いていったからこそ後の隆盛があるのだ、と思うと実に感慨深いです。
収録されている短編ではやはり「ドオベルマン」が出色の出来か。