2024 イギリス/アメリカ
監督、脚本 ダイナ・O・プスイッチ

死をもたらすものを、どこかユーモラスに描くセンスが光る一作
死へいざなう鳥と遭遇した母娘の、決死の抵抗を描いた異色のダークファンタジー。
鳥=死神と考えればいいかと思うんですが、鳥自身がなぜそんな役割を自分が担っているのか、まるで理解していないことが特徴的で。
ただ使命感に突き動かされ、声に導かれて鳥は死が間近な人の元へとやってくる。
『仕事』なんですね、取り組み方が。
好きも嫌いもなくて、そうしないとゾンビみたいなのが世の中にあふれかえるからやむなく従事してる、って感じで。
超常の存在でありながら、働きぶりはシステマチックだったりするわけです。
そこに付け入る隙がある、とみた母と娘の抗弁、詭弁が見どころのひとつでもあって。
果たして母娘は、決められた死をひっくり返すことができるのか?が物語の要衝。
死神を巨大な鳥でビジュアル化した発想もさることながら、私が一番「やるな」と思ったのは予測のつかないシナリオ進行。
中盤、母親が暴挙ともいえる行動に出るんですが、そこからの展開ときたらスイス・アーミー・マン(2016)並みに意外性満載で。
落としどころが全く見えてこないんですよね。
また、コメディ風でありながら、根底には「娘を死なすまい」とする母の必死さが見え隠れしていて。
お話はどんどんそんなのうまくいくはずがない、ってな方向へ進んでいくんですけど、それゆえ、どんな形であってもすがりたい母の気持ちが伝わってきます。
滑稽さがね、なんか切ないんですよね。
わかりやすく泣かせようとしないのが私はスマートだと感じましたね。
ぶっちゃけ、物語は、ちょっと優しすぎるかな、と思えるエンディングを迎えます。
なんか鳥の性格変わってないか?と思ったり。
エンディングで冷めちゃった人もひょっとしたらいるかもしれない。
ただまあ、これで最後突き放しちゃうと、身も蓋もない映画で終わってしまうだろうから仕方なかったのかもしれませんが。
最後に全部ひっくり返せたら「独創的な傑作」と評されることもやぶさかではなかったかもしれませんね。
このままでも十分個性的ではあるんですがね。
A24らしい挑戦的な一作ですね。
とりあえず、監督デビュー作としては上出来だったんじゃないでしょうか。
終わりの鳥のキャラクターをデティールにこだわって(鳥を水浴びさせたら、死の穢れで水が真っ黒になった等)肉付けしていった手腕といい、高い力量の持ち主であることは確かだと思います。
なぜか日本じゃあまり評判よくないですが、私にとっては記憶に残る一作でしたね。
ねじレート 86/100

