ダムゼル 運命を拓きし者

アメリカ 2024
監督 ファン・カルロス・フレスナディージョ
脚本 ダン・マゾー

中世的な世界観をベースとした、剣と怪物のハイ・ファンタジー。

貧しい国の王女が、自国への援助と引き換えに、見知らぬ王国の王子の元へと嫁ぐことになる展開で幕を開ける物語なんですが、まさか30分も経たぬうちに「火を吐くドラゴン相手のサバイバルもの」へとストーリーが変転するとは、と驚かされた作品でしたね。

どうせ指輪物語やナルニア国物語みたいな感じなんでしょ?とタカをくくってたんですけど、見事気分良く裏切られた、というか。

「王子の裏切り」から「生贄」までの流れは、この手のお話の鉄板なパターンだったと思うんですが、その後の「絶対泣き寝入りはしない」とした悪あがきがね、アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ(1978)を嚆矢としたリベンジものにも似て、意外性の塊だったように思いますね。

ハイ・ファンタジーでこんなことをやらかした映像作家はいないんじゃないですかね。

だってね、ドラゴン相手に洞窟を逃げ惑うシークエンスとか、まるでディセント(2005)みたいな様相を呈しててね、ビデオゲームのRPGでもここまで追い込まねえぞ、って感じで。

武器もなければ力もない絶対的弱者である女が、空飛んで火を吐く怪物相手にギリギリの攻防で命を繋いでいく作劇は、一瞬の油断で即死なのがわかってるだけにとんでもないスリルでしたね。

さらには、ただ洞窟から逃げ出すことしか考えていなかった女が、人を救うために、徒手空拳なのにも関わらず、あえてドラゴンに挑もうとする終盤の展開も熱くていい。

まー、盛り上がりますよね。

いやいや死ぬから、絶対ムリだから!って。

最終的に女はどうやってドラゴンと渡り合ったのか?は実際に見ていただくとして。

若干ね、都合良すぎるかな、と思った部分がないわけじゃないんだけど、知恵と工夫が窮鼠猫を噛む按配で、なるほどそうきたか、と膝を打ちましたね、私は。

エンディングは爽快の一言。

きっちり方を付けてくれて、モヤモヤもスッキリ。

いや、一級品のエンターティメントだと思いますね。

抗えぬ運命に従順なまま、いくつになっても白馬に乗った王子様を夢見るお花畑な王女様像をぶっ壊した快作だと思います。

どこか現代的なテイストもあるのが良。

そりゃNETFLIXで一時期再生数トップにもなるわ、と納得の1作でしたね。

ねじレート 88/100

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