1993年初出 松本零士
潮出版社希望コミックス 全7巻
銀河系宇宙を飲み込む、謎の崩壊断面から人類を救うため、レオナルド・ダ・ヴィンチが生存した15世紀のイタリアへとタイムトリップしたヒロイン、マミヤを描いた大河SF。
さて、なぜマミヤはダ・ヴィンチのもとへ向かったか?というと、彼女が暮らす22世紀のコンピューターが「この危機を救えるのはレオナルド・ダ・ヴィンチだけ」と断定したから、なんですね。
具体的になにをどうすることでダ・ヴィンチが手を貸してくれるのか?はさっぱりわかりません。
とりあえず、幼少期から彼を見守ることで、学んできます、みたいな。
そもそも「崩壊断面」って、なんなんだよ?ってところからしてよくわからないんで。
スケールだけはやたらでかいんですけど、はっきり言って物語の「引き」は恐ろしく弱いです。
15世紀に到着したはいいが、さしあたってすることが何もないんですね、マミヤ。
結局、ダ・ヴィンチの伝記ものがやりたかったのか?と思えるような退屈さでして。
そうこうしてるうちに、同じような理由で45世紀から別の女がやってきたり、アルバーノ山の魔女、と呼ばれだしたり。
まー、恐ろしく話が進みません。
延々、仲間内でごちゃごちゃやってるだけ。
本題に触れることなく、ストーリーは脇道に逸れ放題。
SFなはずなんだけど、この堂々巡りな感じは作者の四畳半シリーズにも似てるなあ、と思ったり。
読み進めれば読みすすめるほど不安になってきます。
相変わらずひたすら思わせぶりなんだけど、これちゃんと伏線回収して終わることができるのか?と。
ミライザーバン(1976~)にも共通する、時間の概念を思弁する物語の方向性や、並行宇宙に関する考察は面白いんですけど、なかなかそれがストーリーのうねりとなって大きく盛り上がってくれないんですよね。
ようやく物語が熱を帯びてくるのは最終巻、7巻に至ってから。
やっと重い腰を上げて崩壊断面の危機に取り組み出します。
迎えたクライマックスは、らしいといえばらしいですし、望外に詩的だったりもして、悪くはないんですが、難点は「ダ・ヴィンチ、なんの役にもたってねえじゃん!」と簡単につっこめてしまうことでしょうかね。
というか、物語に登場する必要すらない気もしますね、このエンディングだと。
マミヤがいったいなんの示唆を受けたんだよ!とつっこんだ人は大勢居たはず。
2~6巻までが内容的に全く必要ない、と感じられることも大きな問題かと。
コミックトム掲載作品らしいなあ、と思いますね。
もう、自由気ままにやりすぎ。
ただ、松本作品できっちり完結にまでこぎつけた作品って、長編だと本当に少ないと思うんで、そういう意味では希少かと。
設定の齟齬や辻褄の合わない部分もあるんですけどね、もうこれは作者の性質みたいなものだと思うんで、この際目をつぶっときましょう。
宇宙海賊も銀河鉄道も出てこない最後の松本SFじゃないでしょうか。
傑作とは言い難いですが、嫌いではないですね。