フェノミナ

イタリア 1984
監督 ダリオ・アルジェント
脚本 ダリオ・アルジェント、フランコ・フェリーニ

フェノミナ

虫と心を通わせることのできる少女が巻き込まれた連続殺人事件を描いたスリラー。

一応便宜的にスリラーとは書きましたが、実際のところはほとんどホラーかもしれません。

とはいえ少女が発揮する能力に至ってはどこかキャリーを彷彿させる、SF的サイコロジカルな要素もあったりする。

でも事件そのものの経過はサスペンスの流儀から逸れたものではない。

要は配分が絶妙なんですね。

どのようにもとれるが、そのどれでもなく、どれが欠けてもこうはならなかっただろう、と思わせる独特の色彩がある、とでもいいますか。

あ、監督はサスペリアシャドーを経て、あらたな境地を開拓したな、と私なんかは思った。

特に私がこれはうまい、と思ったのが犯人と対峙する少女の味方が車椅子の教授とペットのおサルしかいない、という設定。

もうどう考えたって対抗できるはずがないんです。

でも少女はこの護衛とも呼べぬひ弱な面子で、殺人犯と渡りあっていかなきゃならない。

これをスリルと呼ばずしてなにをスリルと呼ぶのか、という話であって。

監督もそのあたりは心得たもので虫しか援護してくれない少女に、それはもうひどい仕打ちをします。

特に終盤、ある場所に少女がつき落とされるシーンなんて、あまりの悪逆非道ぶりに見てるこっちがトラウマになりそうになった。

イタリアンホラー屈指の吐き気を催すシーンとはまさにこれ。

はっきりいってストーリーはいきあたりばったりで、伏線もクソもあったもんじゃないのは確かなんですが、筋立てなんかはどうでもいいと思えるほどの完璧なキャラ配置、初期設定があったように私は感じました。

エンディングの二重オチもお見事。

ダメな人は多分、徹底的にダメだろうなあ、と思われるショッカーな1本ですが、私はこの作品を見てアルジェント監督に惚れ込みましたね。

個人的には監督のフィルモグラフィーのなかで3本の指に数えられる一作だと思ってます。

サントラを担当してるゴブリンも相変わらずいい仕事してます。

いや、傑作だと思いますね。

コメント

  1. […] 「フェノミナ」「オペラ座血の喝采」と、アルジェント偏執の美学が頂点に達したか、と思われる傑作を立て続けに形にしたあとの作品ゆえに当然期待は高いわけですが、あれ、ちょっと初期の作風に戻っちゃったかな、ってな感じですかね。 […]

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