アルゼンチン 2017
監督、脚本 デミアン・ルグナ
ブエノスアイレスの住宅街の一角で、数世帯を巻き込んで次々と起こる怪現象を描いたホラー。
広義のホーンテッドハウスもの、と言っていいかと思うんですが、ギレルモ・デル・トロがハリウッドリメイクの製作を買ってでただけはあって、ショッカーな描写はなかなかのエグさでしたね。
とりあえず序盤、嫁が便所で人間振り子と化すシーンは、ゾンビ映画見ながらミートスパゲッティを平気で食える私のような人間でさえ「うわっ」と小さく声が漏れた。
埋葬された少年が自力歩行で自宅へ帰ってくるシーンも同様。
死人が食卓に座し、朝食を前にする絵は忌まわしさが匂い立つような罪深さがありました。
派手に血飛沫飛ばしてグロい、ってんじゃなくて、得体のしれなさを具象化するすべに長けている、というか。
なんだこれ、何が起こってるの?!と観客の恐怖心を煽るアイディアは多彩だったように思います。
その点に関しては評価されてしかるべき。
ただ問題はシナリオ進行でしょうね。
なんだかよくわからんのですが、突然心霊研究家みたいなババアがでてきやがるんですよ。
で、仲間と一緒に別々の家屋を妙な計器で計測し始めるんです。
俄然たちこめる胡散臭さ及び絵空事臭。
なんだかものすごく70年代っぽい。
私はヘルハウス(1973)などという古典的ホラーを思い出したりもした。
どうなんでしょうね、アルゼンチンでは21世紀を迎えた現在をもってしてもいまだ心霊科学とか、その手の疑似学問が幅を利かせてたりするんでしょうかね?
どちらにせよ、私はババアが最終的に「次元がどうのこうの」いい出した時点で決定的に冷めた。
なにを寝言ほざいてやがるのか、と。
エンディングも物語を着地点に導いていた、とは到底言えない。
結局ね、何ひとつ真相は解明されてないんですよね。
なぜそのような現象が起きて、あのラストに繋がったのか、筋道立てて解き明かすってことを完全に放棄してる。
そりゃね、あえてはっきりさせない手法もあるかとは思いますよ、でもこれは違うもの。
最初からちゃんと考えてないってのが丸わかり。
光るものはあったが、落とし所不在の脚本が不出来、ってのが私の結論。
デル・トロの仕事はまずシナリオのテコ入れから、でしょうね。
あんまり多くはない南米ホラーの話題作としてマニアが注目する分には発見があるかもしれませんが、広く一般に支持されるにはクリアすべき課題がいくつか残ってる、といったところでしょうか。