追龍

香港 2017
監督 バリー・ウォン、ジェイソン・クワン
脚本 バリー・ウォン、ジェイソン・クワン、フィリップ・ルイ、ハワード・イップ

1960年代の英国領時代の香港に実在した黒社会のボス、ン・シックホウと香港警察のロイ・ロックをモデルとしたクライム・アクション。

よくあるパターンの成り上がり映画、と言ってしまえばそれまで。

マフィアのボスと、警察官が奇妙な友情を育みつつも、互いを利用しながらのし上がっていく、というストーリーも実話ベースとはいえ、既視感たっぷりですしね。

似たようなマフィア映画(ノワール?)はメジャー、マイナーを問わず履いて捨てるほどあると思うんですよ。

ましてや香港には名作と呼ばれたインファナル・アフェア(2002)もあることですし。

もう、見る前からオチがわかっちゃうんですよね。

うまくいった試し(ハッピーエンド)がないんだから、この手の映画の顛末って。

どう転ぶのかわかってる映画ほどつまらんものはないわけで。

それでもなお私がこの作品を手にとったのは、ひとえにドニー・イェンが出演しているからに他ならない。

もうだいたいなにをやるのかわかってるけど、ひょっとしたらドニー・イェンがこの手の映画にはあるまじき超絶アクションを見せつけてくれてるのでは・・などと思ったんですよね。

違った。

とりあえずなぜその髪型?とつっこむところから始めるしかなかった。

灰色な取引で小金を溜め込んでる、貴金属好きな昭和の不動産屋の社長かよ・・・って話だ。

なんで香港映画のアクションスターはそろいもそろって変な髪型を好むんだろう、と小首をかしげてしまうほどに2017年のセンスとは思えない(60年代が舞台の映画ではありますけどね)ですね。

また、アクションもねえ、チンピラという役回りのせいか、ドニー、わざと素人っぽく振る舞ってる節がありまして。

それはそれですごい、とは思うんですよ、体に染み付いたものを崩す、って大変なことだと思いますし。

リアリズムに徹する姿勢も素晴らしいと思う。

でも、我々がドニーに期待することって、そういうことじゃないですよね。

アクションに比重を置かないなら、わかりやすい乱闘シーンとか、もうやめてほしいわけですよ。

私はドニーの演技派としての才能も買ってるんで、中途半端に見せ場を作るぐらいなら、いっそのことアクションを封印するぐらいの姿勢で臨んでほしかった、と思ったり。

唯一、この映画がタイムリーだと思ったのは、英国人警司による理不尽な圧力、非人道的な施策が現在の香港の置かれた状況とかぶってる、と感じられたこと。

香港映画人の反骨心を見た気がしましたね。

我々は、過去も現在も巨大な権力の言いなりにはならない、みたいな。

よくぞまあ中国で無事に公開されたことよな、と思います。

うーむ、過去、未来の物語に関しては共産党の検閲も甘い、って本当みたいだなあ。

終盤、物語は予想どおりの方向へと進み、スカーフェイス(1983)かよ、と言いたくなるようなシーンを経て、やけに印象的なエンディングを迎えます。

ラストシーンでようやくドニー・イェン面目躍如、といったところでしょうか。

こういう演技もできるんだからあえて期待に答えないのもありだと思うんですけどね、ドニーをもってしてもアクションのくびきから逃れるのはやはり難しいのか。

アンディ・ラウとの共演がファンにとっては嬉しいスター映画、といったところでしょうか。

香港映画らしからぬ緻密な構成、落ち着いたシナリオ運びは好感がもてましたが、ドニーが出てなきゃ多分見てないだろうと思います。

あ、九龍城内部の映像や外観は失われて久しいだけに興味深かったですけどね。

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