カナダ 2017
監督、原案 セス・A・スミス
海岸近くに建つ「三日月の家」で静養する母子を襲う怪異を描いたホラー。
なんだろ、海からなんかやってくるのかな?と最初は思ったんです。
常世信仰とか、まれびととか。
カナダにその手の民間伝承はなさそうだけれども。
せいぜい海で死んだ人の幽霊とか、その手の類だろうなあ、とタカをくくってたりもしたんですが、見進めていくにつれ、どうやらそういう話じゃないみたい、と気づく。
キャッチコピーじゃ「海から招待客がやってくる」とか、のたまわってやがりますが、なんだろ、見当違いじゃないにせよ、恐ろしく遠い感じです。
そこはホラーファンが経験値にものをいわせて予測できるような筋書きじゃない。
というか、前半30分ほど、ほぼ何も起こりません、この映画。
延々母親が子供と自宅及びその周辺で戯れてるだけ。
わかったのは「どうやら父親が死んだらしい」ってことのみ。
更にその後30分、一向に物語は加速する様子もなく、見知らぬ隣人が登場したり、深夜にインターホンが鳴ったりでひたすら日常がだらだらと連なっていく。
いやね、ホラーだと思って見てたものだからね、この立ち上がりの遅さはいったい何事なんだ、と。
ヨーロッパの内省的な人間ドラマかよ、って。
血飛沫とか切り株とかゴアな描写を期待してる人は間違いなく振り落とされると思います。
かく言う私もあまりにのらりくらりと牛歩気味な進行に、途中で一度意識が飛んだ。
ようやく物語が動き出すのは約1時間を経過してから。
なんだかオカンの様子がおかしいぞ?と訝しむのも束の間、あ、これひょっとして・・・とオチが脳裏をよぎる。
で、予想したとおりのオチだった、と。
はっきりと「実はこういうことだったんです」とは明かさないんですけどね、まあ、よく映画見てる人なら普通に真相を察することはできるだろうと思います。
さーて、どうなんだろうなあ、この映画。
マーブリングのシュールな色彩模様を随所に挟んだり、スマホの動画を謎解きのヒントとばかり挿入したりと、工夫の跡が伺えるし、センスも悪くないと思うんですが、この手のオチってもう何度も色んな映画がやってるわけですし。
ストレートにどんでん返しとせず、謎めかす形で新基軸を打ち出したつもりなんでしょうが、相当なマニアしか好意を寄せてくれないような気がしますね。
特に私が気になったのは、現実と虚構らしき描写がまるで地続きだったこと。
違和感、温度差みたいなものをあんまり感じないんですよね。
あれっ、なんか変だな・・・と思わせておいてこそのオチだったと思うんですよ。
あえてメリハリをなくしたのかもしれませんけどね。
どうあれ、ホラーファンからも、それ以外からもどこか距離を感じてしまう仕上がりになってしまったように思います。
嫌いじゃないですけど忘れてしまうだろうなあ、きっと。
こういう映画がお好きな方々は確実に存在するとは思うんですが、なかなか大きく話題になりそうにない、そんなところでしょうか。