イギリス 2015
監督 アンドリュー・ヘイ
原作 デヴィッド・コンスタンティン

結婚45周年を迎える老夫婦の心のすれ違いを描いた人間ドラマ。
あーこれは若い人が見てもなかなかシンパシーを得ることは難しいだろうなあ、と思ったのがまずあって。
反面、結婚生活を経て一定の年齢以上になった人たちにとっては、「ああ、なんかわかる」ってな、出来になっているように思います。
物語そのものに、さして大きな起伏はありません。
遠い過去の出来事を夫婦関係の亀裂としてじわじわとあぶりだして行く手法は、どうしても地味に映りがちかも。
ただ、妻の揺れ動く気持ちの変化を丁寧に描写していく演出は、セリフひとつひとつにこだわったシナリオの秀逸さもあって、思いのほかひきこまれるものがありました。
語らぬ心理描写もさりげなく巧み。
屋根裏部屋がある天井に妻が自分の掌の影をうつすシーンや、夫の喫煙を発見してもなにも言わないシーン等、言外に含まれるものは饒舌だったように感じました。
私にとっては、なんか男はいくつになってもダメだな、と思わされた作品でしたね。
そして、例え老境を迎えようと女はいつまでも女なんだ、と突きつける作品でもありました。
そこにぽっかりと口をあけているのは、愛情とは嫉妬の産物である、とでも言いたげなままならなさ。
これを薄ら寒い、と言ってしまうと色々語弊があるかもしれませんが、男の立場からするとどこか「怖い」と感じるものがあったことは確か。
ラストシーン、華やかな結婚45周年を祝うパーティーでの妻の表情、しぐさが恐ろしく印象的です。
たとえ45年連れ添ったとしても、一度こぼれてしまった水は二度とコップには戻らないんだ、とでも言いたげなその顛末、熟年離婚を恐れるお父さん方はある意味必見かもしれません。
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