アメリカ 2015
監督 リード・モラーノ
脚本 クリス・ロッシ

この作品を見るにあたって、まず一番注意しなければいけないのは「衝撃の結末」などというキャッチコピーで、あたかもこの作品がサスペンスであるかのように印象づける配給会社の思惑だったりする。
違うから。
サスペンスじゃないから。
私も最初はプリズナーズみたいな感じなのかな、と思ったんです。
ふと目を離した隙に居なくなってしまった子供、そして衝撃の結末、ときては、きっと誰もが似た想像をするはず。
ましてや父親は警察官。
ああ、職責を放棄して特権を私的利用し犯人を追うんだ、そうに違いない、って普通は考えるでしょう?ねえ、あなた。
えー、犯人、追ってません。
両親は警察の捜査が進展するのを一日千秋の思いで待つばかり。
描かれているのは、何の前触れもなく突発的に子供を失ってしまった夫婦の1年後の日々。
むしろ、降ってわいた災難に心を蝕まれる犯罪被害者の苦悩に焦点を当てた人間ドラマ、と言ったほうが内容的には妥当かもしれません。
特に着目されているのは、根拠のない直感で「あの子は生きている、私にはわかるの」と強情をはる母親の壊れていく様子。
口では信じている、といいながら、相反するように1人の発達障害児に執着する母親の行動は痛々しくもどこか薄ら寒いものがあり、理屈で割り切れぬ彼女の内面を描写する上で非常に高い現実味があるように私は感じました。
ひょっとすると綿密な取材や検証が作品作りの背景にあるのかもしれない。
ただまあ、正直テンポはあまりよくないです。
どっちかというとまどろっこしい進行。
なかなか話は進まないし、なにか事態が急転するわけでもない。
そこにひっかかっちゃうと寝オチなんてこともありうるかもしれませんが、あれこれ先入観を捨てることが出来たなら、前述した、不可解な心の機微を掬い上げる几帳面さが先の展開に対する期待につながるかもしれません。
物語が一気に動き出すのは終盤。
自分でもその心情を理解できぬまま、母親はある行動にでます。
うわ、これどうするつもりだ、まとめようがないぞ、こんなことしたら、大丈夫か、と焦る私をよそに、待ち受けるのは突拍子もなく唖然とするエンディング。
なんだこの絵、とあっけにとられたのは確か。
しかも一切の落とし所、合理的解釈を全放棄して突然のエンドロール。
これはさすがに賛否両論でしょうね。
だからなんなんだよ、と怒る人もきっと居たと思う。
ただね、妙な余韻が後をひくんですよね、このエンディング。
私はどこかヌーヴェルヴァーグの残滓を嗅ぎ取ったりなんかもした。
多分、時間の経過とともに徐々に埋もれていってしまう作品なんだろうなあ、とは思います。
けれど、これが初監督作品となるリード・モラーノの「普通に終わらせまい」とする気骨は匂い立ってましたね。
うん、嫌いじゃない。
傑作ってわけじゃないと思いますが、個人的には記憶にとどめておきたい作品でしたね。