2006年初出 五十嵐大介
小学館ikkiコミックス 全5巻
作者らしい内容だ、と感じつつも、どこかこれまで以上のことをしようとして空回りしているような印象も。
とりあえずスケールはとんでもなく大きいです。
あらゆる生命にまつわる海と地球の物語。
イマジネーションの洪水とでも言いたくなるような、夢想的シーンの連続及び断片的で意味深なセリフの積み重ね等、酔わされる場面は多いんですが、詩的過ぎた、というか、ちょっと突き放しすぎ、というか、実は思いのほかカタルシスが得られないのは五十嵐大介ゆえの美点と考えていいものなのか、あれこれ悩んでしまうところはありますね。
非常にアーティスティックではあるんです。
よくぞまあ商業誌でこれが許されたことよなあ、と思ったりもする。
で、散々煽った割には肝心のエンディングがどこか煙に巻かれたような感触だったのが、さらに混乱に拍車をかけているようにも思えて。
やはり読者を選ぶ、と言わざるをえないでしょうね。
多くを語らず、感性に訴えかける叙情性の豊かさは誰にでもマネできるものではないと思うんですが、だからといって過去作を凌駕する最高傑作、とは言いがたいのが歯がゆいところ。
なんとも評価の難しい本です。
決して嫌いではないんですが、これを「だからどうした?」と言ってしまえる人がいるであろうことも充分理解できる。
とりあえず、ファンは裏切られない、とだけ。