2009年初版 吾妻ひでお
角川書店

作者の若かりし頃を描いた自伝風エッセイ漫画。
失踪日記以降の作品らしい、精緻な作画が映える高品質な一品、と言っていいでしょうね。
とりあえず背景の書き込みは尋常ではないです。
漫画表現でしかあり得ぬ奇異な人外の造形の数々は意図的なものなのか、それとも作者には本当に当時そのように見えていたということなのか、ある種の心象風景であったと解釈してもこれは全くもって「異質」だ、と感じましたね。
ちょっと「やばい」ものを嗅ぎとったりも。
精神状態は良好なのでしょうか、と。
しかしながらいまだかつて自伝をこのように描いた漫画家っていなかったのでは、という驚きもあり、こりゃ実話に見せかけた巧妙なSFなのでは、とひとりうがった見方をしたり。
実に興味深い一冊。
もしこの手法で次があるのなら、ここからさらに化けていくような気もしますね。
前人未踏の地に立とうとする前夜の作品?
かいかぶりすぎなのかもしれませんが、不条理日記のテイストと失踪日記のエンターティメント性が見事融合した吾妻ひでおだけの1冊なのは間違いない、と思う次第。
これは読んでおくべき。