バートン・フィンク

アメリカ 1991
監督、脚本 コーエン兄弟

バートン・フィンク

なんともシュールな一作、と言うほかない。

1940年代アメリカ、ハリウッドに招かれ、映画のシナリオを書くことになった新進気鋭の劇作家が遭遇する仰天の出来事を描いた作品なんですが、まず私が驚かされたのは、書けないライターの苦悩を描いたドラマなのかな、と思いきや、実はスリラー仕立てだった、ということ。

さらには、スリラーに見せかけて、本当は不条理劇かもよ?と匂わせていることにこれまた仰天。

これ、中盤以降の展開を現実なのか妄想なのか、どう受け取るかによって全く意味が変わってくるようにも思うんですね。

まあ、合理的に考えるなら現実であるはずがない、とも言えてしまうわけですが。

どこからが主人公フィンクの妄想を絵にしたものなのか、判断は難しいんですが、心象風景である、と断じてラストシーンを読み取るなら、謎の箱の中身、これ、相当恐ろしいことになってるな、と1人震えたりもするわけです。

どこかクローネンバーグ一連の難解な作品に似た質感もあり。

ただクローネンバーグと違うのは、生理的嫌悪感と観客を顧みぬ独創で孤高のポジションに立つのではなく、適度なユーモアと焦燥感を不気味に織り交ぜながらも、幾通りかの解釈を可能にする余白が作品にあることでしょうね。

私にとって、この余裕の見せつけ方はなにやら貫禄すら感じられるものでした。

それが、この奇妙な作品を、よくわからない部分もあるけどなんだか不思議におもしろい、と思えるものにしているように思います。

カンヌのパルム・ドールに輝いた作品って、あんまり肌の合わないものが私の場合、多いんですが、この作品に限っては珍しく退屈とは無縁。

こりゃさすがに認めざるをえない、と唸らされましたね。

とりあえず、ジョン・グッドマンの怪演は必見かと思います。

役者の使い方がうまい、これもまた監督の才でしょう。

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