1987 アメリカ
監督 ジョエル・コーエン
脚本 コーエン兄弟

実に映画としてきっちり作ってあって、コメディであるにもかかわらず、いわゆるコントっぽいスタイルに迎合しないのがこの人たちらしさ、なんだろうなあ、と思います。
もちろんギャグや悪ノリはあるんですけど、それを凄く真面目に撮るわけです、コーエン兄弟は。
別にゆるくてもいいんじゃないか、と思えるようなところまできっちり計算して構成するから、え、ここは笑ってもいいんだよね、と戸惑ったりする部分もあって。
でも、それこそがまさに味なんだろうなあ、と。
さあ、ここ笑うところですよ、といった感じの目配せがないから、見てて爆笑することってあんまりないかもしれませんが、逆にコメディですらここまで冷徹な目線で仕上げてしまうのか、という点にかえって含み笑いが漏れてきたりも。
いやー、ほんと個性的な映像作家だと思います。
狙いすまさない笑いがある、とでもいいますか。
若き日のニコラス・ケイジが思った以上にかっこいいのにもかかわらず、二枚目半を演じてるのもいい。
綺麗なのに気どらないホリー・ハンターの演技も二重丸。
エンディングできっちりドラマとして成立させてるのにも感心。
ご都合主義的にハッピーエンドじゃないんですね。
取り巻く環境が不透明であることをきちんと認めた上で、ささやかな「願い」を落とし所にするシナリオのセンスに私は舌を巻きました。
これがやたら心揺さぶられたりもするんですよ。
傑作だと思います。
コメディの文脈を免罪符としない心美しいドラマ、という見方も可能なんじゃないでしょうか。