デューン/砂の惑星

アメリカ 1984
監督 デヴィッド・リンチ
原作 フランク・ハーバート

デューン/砂の惑星

大河SF小説として名高い6部作を映像化した作品。

ホドロフスキーが73年に着手するも、制作中止に至ったとか、リドリー・スコットが降板したとか、色々逸話が残ってる映画ですが、それにしたってデヴィッド・リンチはねえだろう、と少し思ったりもします。

だってイレイザー・ヘッド(1976)やエレファント・マン(1980)の人ですよ?

全然作風が違うじゃねえかよ!って。

当時もきっと、同じようにつっこんだ人は大量に居たんでしょうけど。

例えどんな小品であろうと、話題になった映画を撮った人、実績を残した人には大作を任せてみる、というのは業界として健全ではあるんでしょうけどね。

本人もびっくりしたでしょうね。

「えっ?俺がデューン撮るの?!」みたいな。

原作ファンからは「ダイジェスト版みたいになってる」「浅薄だ」等、さんざん酷評されて興行的にも大コケした一作ですが、改めて見てみると、そんなにひどく言わなくても・・・とちょっと思ったり。

いや、デヴィッド・リンチは畑違いなジャンルでよくがんばってますよ。

きっとあれこれ横槍を入れられたんだろうなあと思うんですが、きちんと仕事してる。

基本、この物語って典型的な貴種流離譚だと思うんですね。

舞台が地球を遠く離れた宇宙だから、政治や文化、生活習慣や民族性に違いがあるというだけで。

ベタといえばベタ。

生態学をモチーフとした最初のSF小説である、との評も見かけますんで、きっと原作は単なるスペースオペラじゃないんでしょうけど、2時間程度の尺で全部収めようと思ったら、そりゃ主人公の成長物語で片付けるしかないですよ。

思想や哲学まではとても描いてられないでしょう。

少なくとも砂の惑星という異郷を当時の技術でもっともらしく描くことに関しては、平均点以上の頑張りを見せていると思います。

空飛ぶデブ大公やギルドのキャラクター造形、クリーチャー、小道具のデザインも秀逸。

誰がここまで趣味全開にしろといったか、と言いたくなるぐらい個性が炸裂してる。

特に私が着目したのは砂虫で、これ後のトレマーズ(1990)とか、あの手の地中を這う怪物のイメージに強烈な影響与えてないか?と思った。

本来ならバーフバリ(2015)のように徹底して主人公を魅力的に見せることに心血を注がなきゃいかんのに、脇役や異形の演出にこだわりまくってどうする、って話でね。

どこかグロいんですよね、英雄譚なのに。

一部の人からはカルト作と呼ばれ、支持されてるのもなんとなくわかりますね。

大枠で裏切ること無く、愛と勇気のストーリーを構築しておきながら、それでも隠しきれない作家性が嫌らしくも染み出してる、ってのがさすがリンチと言うべきではないでしょうか。

私は割と好きですね。

体よくまとめられてしまった映画なのかもしれませんが、この意味不明な不気味さはなんだか癖になる、と思った次第。

ちなみに2017年、ヴィルヌーブが監督でデューンを再映画化するとワーナー・ブラザースよりアナウンスがありましたが、進捗状況はどうなってるんでしょうね。

リンチ版とどう違うのか、気になってしかたがない。

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