1990~94年初出 森脇真末味
新潮社

<収録短編>
サカナカナ
フラミンゴカフェ
コラージュ
ユージーン
森脇真末味が描き続けてきた「屈折した人たちの人間ドラマ」の到達点が本作に収録されている表題作ユージーンだと私は思いますね。
絶望的で救いはないんですが、その救いのなさを見つめる作者の淀みのない視線、主人公に最後に吐かせたセリフにあたしゃノックアウトされた。
作品を貫く質感は痛々しいんですが、全てを統括して無常観すら漂うエンディングはお見事と言うほかない。
文句なし傑作。
「コラージュ」も作者らしくない異色の短編。
この人が真正面から恋愛を描くとこうなるのか、と少し驚かされた。
よくよく考えてみたら恋愛そのものがテーマだったことって、過去作ではなかったような気がするんですよね。
すべてを追ってるわけではないので自信はないですが、重要視してないのは間違いないと思う。
それゆえか、妙に生々しく気持ちをかき乱されるものがある。
この作品集以降、新作(再編集版を除き)を確認していないんですが、ユージーンでもう全て描き尽くしたのかな、と思ったりもしますね。
ずっと追いかけて来た人ははずせない一冊でしょう。