エクセル・サーガ

1996年初出 六道神士
少年画報社ヤングキングコミックス 全27巻

全く予備知識なしで手にとったので、絵柄とタイトルから想像するに「多分角川系の中世異世界ファンタジーなんだろうなあ」「ニッチな読者層にしか訴えかけてないんだろうなあ」と、一方的な先入観でもって舐めくさってたんですが、これがどうしてどうして、安易な予想を覆してやたら面白かったりするものだから本当に恐れ入った。

まさかこの表紙で「ほとんどギャグマンガ」だなんて想像もしなかったですよ。

やってることは特撮ヒーローもののパロディであり、もし悪の組織の視点で世界征服のプロセスを描いていったらどうなるか?なんですけど、首領以外の構成員が女子一名しかいない、という初期設定で早くもツボ。

地下アイドルとそのファンかよ!って話だ。

天体戦士サンレッド(2004~)あたりにも近い質感があるんですけどね、この作品が独特にナンセンスなのは、ヒーロー不在なまま悪の秘密組織アクロスがひたすら空回りしてる点でしょうね。

物語中盤でやっと敵対する正義の執行者が現れたかと思いきや、その中心人物は浮世離れしたすっとぼけてるキチ◯イ博士だったりしますし。

まあ、ろくなことをしでかしません。

悪ノリをいさめる存在が一切登場しないまま、物語は破天荒にメーター振り切りっぱなし。

ようやく補充された新たな構成員が、事あるごとに吐血する病弱な女子、というのにも爆笑。

中盤以降に登場した3人目の構成員、エルガーラの存在なんてほとんどドツキ漫才の相方状態ですから。

なんだこの一向に陰りを見せぬハイテンションなおふざけぶりは、と感嘆。

女の子3人がドタバタやるギャグ漫画で、ここまで見事に笑いの緩急を操り、台詞回しのセンスの良さが光ってる作品って、過去になかった気がしますね。

他の漫画作品の有名なキャラを登場させて、好き勝手いじりまくる回も秀逸。

とりあえずエメラルダスは松本零士に訴えられると思う。

ドカベン宣教師に至っては水島新司とベルセルクの二重なパロディになってて、はらわたがよじきれるかと思った。

ちなみに長期連載を続けるうちに、だんだん思わせぶりなSFっぽいシーンがちょくちょく顔をだすようになるんですけど、これはまあ、少し目先を変えたかった、程度に納得しておくのが得策でしょう。

ひょっとしてこのギャグ漫画に驚天動地などんでん返し、シリアスなオチが待ち受けてるのか?と、最初は焦ったんですけど、最終話、ぶっちゃけ伏線回収できてないし、謎もはっきりと明かされてはいません。

まとめきれなかったというか後付けでやるには無理があった、ということなんでしょうね。

最も特筆すべきは27巻にも及ぶ連載で、最後まで高い水準でもって笑いを維持していたこと。

パロディから始まった作品で、ここまで手を変え品を変え読者を楽しませ続けたコメディって、ほんとまれだと思います。

もはや大作とよんでいい部類だと思いますね。

何度読み返しても笑える90年代の大収穫といっていいシリーズでしょう。

漫画はページをめくってみるまでわからない、とつくづく思いましたね。

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