ブラジル 2002
監督 フェルナンド・メイレレス
原作 パウロ・リンス

70年代のブラジル、リオデジャネイロの貧困街に生きる子供達にスポットを当てた犯罪ドラマ。
当時非常に話題になって、テレビシリーズが作られたりしました。
物語の骨格としてはですね、かつての有名なマフィアもの、「スカーフェイス」とか「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とかとそう大きく違いはないんです。
ギャングもの、と考えて見て問題はないと思います。
ただこの作品、ギャングであって、血で血を争う抗争を繰り広げる登場人物たちがですね、全員やたら若いんです。
最年長でせいぜい20代前半ぐらい。
日本じゃあ小学生ぐらいでは、と思われる子供達がですね平気で銃を振り回して人を撃ち殺し、抗争に巻き込まれて死んだりするんです。
本当に70年代のリオの貧困街ではこんな光景があたりまえだったの?と目を疑いたくなる陰惨なシーンが連続します。
例え子供であろうと背中合わせの死からは逃れられない貧しさに蝕まれた日常。
そこから脱出するには非合法にのし上がるしかない、と言う現実。
日本と言う国がいかに恵まれた環境にあるのか、これを見て実感しない人はいないでしょう。
監督がすばらしかったのはただひたすら残酷な現実を活写するのではなく、どこかユーモラスなタッチを織り交ぜた部分でしょうね。
でないととても130分の長丁場は見ていられなかった、と思う。
衝撃的な一作だと思います。
出演している俳優がほとんど素人ばかりで、監督に演技指導を受けながら撮影を進めた、というエピソードも仰天です。
ひょっとしたらそれが匂いたつようなリアリズムの喚起に一役買っているのかもしれません。
1度は見ておくべき作品でしょうね。
後進国の現実に対する、血の叫びとエンタティメント性の同居した稀有な1本といえると思います。