スペイン 2014
監督 アルベルト・ロドリゲス
脚本 アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス

スペインの映画賞であるゴヤ賞で10部門において受賞に輝いた作品。
普通によく出来たサスペンスだ、とは思いました。
スペイン郊外の閑散とした田園風景を背景に、猟奇的な殺人事件の犯人を追う刑事という絵ヅラは、その落差ゆえ惹きつけられるものがありましたね。
事件の手がかりであろうと思われるものを丁寧にひとつひとつ回収していく展開も、欠けたピースが埋まっていく快感を観客に感じさせるものだった、と思います。
ただ、ミステリ部分にのみ着目するなら、大きな裏切り、どんでん返しはないんですね。
精緻に組み上げられた犯人探しのロジックは楽々及第点をクリアしていると思うんですが、そこに意外性は存在しない。
で、その代わりに用意されたのであろう隠し球が、予想外の方向から唐突に飛び込んでくる感じなんですが、これ、どうなんだろうなあ、と私は少し疑問。
何が疑問、って、そういうそぶりとか伏線が一切ないまま実は・・・って形でオチにしてしまったことが、なんですね。
示唆するようなシーンは確かにありました。
でも、それが事件の真実につながるような描写ではないんですね。
そうか!あの時のあの意味不明な行為はそういう意味だったのか!と最後に解せるようなものではない。
つまり、とってつけたような後味の悪さ、になっちゃってるんです。
もちろん後から振り返るなら、ああ、それであの男はあの時にこういう行動をとったのか、と納得できたりはする。
でも人間の視覚で感知できないような透明の釣り針を垂らして実は魚釣りしてたんです、と誇られてもですね、なんかフェアじゃない、という気持ちはやはりどこかに残りますよね。
私の読解力、注意力が足りないだけなのかもしれませんが、ちょっと反則気味、と思った一作でした。
見る人によっては見事な大傑作なのかもしれませんが、私にとってはどこかスッキリしない、というのが正直な感想ですかね。