1967年初出 ムロタニツネ象
朝日ソノラマサンワイドコミックス
知る人ぞ知る恐怖漫画として名高い一作。
いやはや凄いです。
カルト漫画数あれど、作者本人の無自覚が思惑とは裏腹にマニアの評価を得てしまった例としては典型かもしれませんね。
もうキャラデザインからして狂ってます。
表紙絵、主人公なんですけどね、どういう思考プロセスをたどればこうなるんだよ、って。
一応ね、正義の執行者なんですよ、地獄くんって。
言うなれば鬼太郎みたいなもの。
えーと、悪いけど何もしてほしくない。
どんなに困ってても手を借りたくない。
というか、夜道でこんな子供に声をかけられたら小便ちびる自信がある。
人物より異郷の背景や人外の存在の描写の方がやたら力がはいってるあたり、水木先生の影響は大きいのだろうなあ、と思ったりもするんですが、懲らしめられる悪人に同情したくなるような不気味さ、薄気味悪さを強烈に放つ地獄くんはもはやダークヒーローの域にすら収まってない、と私は思うわけで。
正義に固執するあまり、情け容赦のない懲罰主義を貫いてる作劇もイデオロギー的に大丈夫なのか?と思う。
残酷で毒々しいのに、少年読者のご機嫌を伺うかのようなおふざけがたまにあるのもバランス狂ってて逆に怖い。
なんでしょう、墓場の鬼太郎(1960~)がオカルトに固執しすぎて地すべり起こした、みたいな。
水木しげるのエピゴーネン、と言ってしまえばそれまでなんですけどね、この世あらざる世界のイマジネーションが滔々と吹きこぼれてる作画、世界観は二番煎じと切って捨てられれぬ何かがあるように思いますね。
併録されている人形地獄も強烈。
地獄くんよりいっちゃってるかもしれない。
いいのかこれ?本にして?と思わなくもないです。
現代漫画にはない忌まわしさを満喫できる奇書と言っていいんじゃないでしょうか。
もう普通のホラーには飽きた、と思ってる人におすすめですね。
ちなみにQJマンガ選書版は地獄くん幻の第6話が収録されていますが、人形地獄は未収録。