アメリカ/カナダ 2005
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
原作 ジョン・ワグナー、ヴィンス・ロック
なにゆえクローネンバーグがこのような作品を?と当時は首をかしげた一品。
今なら(2015年現在)ジェイソン・ステイサムとかリーアム・ニーソンあたりが主役を務めてそう。
良きパパが実は過去、悪逆非道な殺し屋だった、って作品なんですが、プロットはともかくとして私が気になったのは、クローネンバーグにしてはあまりにも作品のタッチがアメリカ的なこと。
息子がいじめられっ子な設定なんてまさにハリウッド。
興行収入の冴えない作品ばかり撮り続けてどうにもならなくなり、ついに監督、魂を売ったか、なんて邪推したりもしました。
いや、知らないんですけど。
まあ、らしい描写もないわけではないんです。
過剰に痛さの伝わるグロな暴力シーンや、日常と同じ目線で描かれるラブシーン、特に階段で情交をかわす展開なんて、ここでこの場面を持ってくるのか、と唸らされたりもしました。
でもやっぱりどこか違和感があるんですよね。
ヴィゴ・モーテンセンをヒロイズムで染め上げなかったのはさすがだ、と思いましたが、暴力の先に見えてくるものがないんです。
かいかぶりすぎなのかもしれませんが、暴力なんて手段であって、本質ではない、とするのがクローネンバーグじゃないのか、と私は思ったりするわけです。
特にラストシーン、こんな薄甘いところに着地するような人じゃないだろあんた、って、思わずつっこみそうになった。
あの瞬間に映像をぶった切って、暗転、エンドロールを流したのはさすがだと感じましたけどね。
私にとっては幾分戸惑ってしまう作品ですね。
何に興味をひかれてこの作品を撮ろうと思ったのか、ご本人に聞いてみたいところ。
余談ですが、エド・ハリス、強烈に存在感があって最高です。
あと、ヴィゴ・モーテンセンがいつになく激渋なんで、単にそこ目当てで見る、というのはありかもしれません。