1989年初出 小池一夫/池上遼一
小学館ビッグコミックス 全4巻
伝奇ロマン風な冒険譚にしたかったのかなあ、なんて思ったりもしたんですが、まあ結論からいいますと主人公のキャラが定まらず、その出生の謎も結局どうなのかよくわからず、すべてにおいてブレた、その一言に尽きます。
結局等身大な普通の男性を主役に据えることが小池一夫はできないのかも、なんて思ったりも。
肉体派で最強で、頭も良くて、度胸もすわってて、身も心も捧げる女が2、3人居る、という全男性諸氏の理想でありシンボルみたいなキャラを主人公に据えるパターンが、時代から徐々にズレはじめていたがゆえの迷走、と考えることもできるかも。
どこか迷いがある風なんですね。
ギルガメッシュやヒトラーまで持ち出して広げまくった大風呂敷は壮大でおもしろかったんですが、そこにお得意のヒーローとそのライバル達が立脚できなかったように私は感じました。
ただ、近眼でおちゃめなヒロイン、レイのキャラは小池劇画においては斬新だったように思います。
エロくて激情的な女性ばっかり登場してましたしね、これまでは。
ラブコメを意識したりしたんでしょうかね?
エンディングもなんとなく打ち切りを示唆されてあわてて畳んだような感じ。
アガルタの謎に迫る展開とかよく出来てるんですけどね、小池劇画の流儀にどうにも上手に染まらなかった感じですね。
ある意味異色作でもあると思うんで、ファンにとっては興味深い一作かもしれません。
エロさを完全に排除して少年漫画的にやったらうまくいったのでは、という気もしますね。