教皇選挙

2024 アメリカ/イギリス
監督 エドワード・ベルガー
脚本 ピーター・ストローハン

バチカン市国の元首である教皇を決める選挙「コンクラーベ」の内幕を描いた政治劇。

さて私はキリスト教最大派閥のカトリックについて詳しいわけでもなければ、バチカン市国について精通しているわけでもないので、見るもの聞くものが全部新鮮だった、というのはありましたね。

なんせ世界中のカトリックの総本山だから、もう常人の理解が及ばない怪しげな儀式とか習慣ですごいことになってるんじゃないか、と勝手に思い込んでたりしたんですが(それこそ真言宗の根本道場、高野山のように)全くそんなことはなく(当たり前だ)。

もちろん登場するのは全員宗教者ですんで、相応の生活規範に縛られてはいるんですが、これがねえ、もう出てくる人物、片っ端から俗物だらけでして。

信仰の深さや人間性でつつましやかに選挙が進むどころか、支持者の取り込みや対抗馬の蹴落としに血眼になる策謀家だらけで。

唯一まともそうなのがせいぜい主人公とあと一人ぐらい、というのがなんとも生臭い。

それでいて全体の2/3の支持者がなければ次の教皇を決めてはならない、といったおかしな制約が存在するもんだから、支持者が増えるまで延々選挙を繰り返す、といった非効率がまさに宗教だよな、って感じで。

そりゃ原作は創作ですんでディフォルメされてる部分もあるんでしょうけど、バチカンと言えど(バチカンだから、か)おかしな妄想は抱かせないストーリー進行はかえって現実味を強く感じさせたりしましたね。

またこの作品、知ってる人だけが理解できればいい、みたいな感じで観客を突き放すことなく、知られざる政治的裏側をわかりやすく描くことに長けていて。

見る前まではね、ハードル高いんじゃないかな、なんて思ってたんですが、いざ見始めるたら全くそんなことはなくて。

ストーリーボードが優れていたのか、それとも構成力が高いのか、多分、その両方なんでしょうけど「巧い」のは間違いないですね。

この手の群像劇って、ともすれば中だるみしたり退屈したりすることもありがちだと思うんですが、集中力が途切れるどころか妙な緊張感をずっと保ってたりするんだから、たいしたもの。

ミステリっぽい謎解きが物語の醍醐味として上手に機能してたのも良点だと思いますね。

特に最後のどんでん返し?みたいな展開には「そんな真相が隠されてたのか!」とびっくり。

若干ね、そう単純に事はすすまんだろ、と思えるストーリー進行が直前にあったりはするんですが、あかされた真相そのものが、主人公に信仰そのものを問う内容になっていたのは見事だと思いましたね。

主人公トマスのセリフで「我々は確信してはならない、それは進歩的だと言えない」というものがあるのですが、まさにその言葉の意味を問うものになっていたことにひどく感心。

エンタメ性を併せ持ちながらも、最終的には個々の信心をも試す仕組みになってるんですよね。

私は無宗教無信心の大馬鹿野郎ですけど、宗教映画というジャンルがあるとするなら、この作品こそがふさわしいのでは、と思いました。

多くの人に食わず嫌いされそうな一作ですが、敬遠してる人にこそ是非お勧めしたい一作ですね。

アカデミー脚色賞は伊達じゃない、と言ったところでしょうか。

ねじレート 90/100

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