2022 スペイン
監督 イグナシオ・タタイ
脚本 イグナシオ・タタイ、イサベル・ペーニャ

何が起こってるのか、全くわからない状態からの怒涛の種明かしが快感
深夜、道路上で一人突っ立っていて保護された少女を、縁があって引き取った夫妻が遭遇する、不可解な出来事を描いたサスペンス。
さて、この作品、滑り出しから謎だらけでして。
なにか疾患を抱えているのか故意なのかわからないんですが、少女が全くしゃべらないんですよね。
しかも白線の中にいないと発狂して暴れだす、という病的なおまけつき。
周りの大人も手の打ちようがなくて。
里親になった夫妻も何やら訳ありっぽい感じで。
奥さんは旦那に黙って一人で注射器を腹部に刺してたりする(糖尿?)。
そもそもなんで夫妻が少女を引き取ったのかもよくわからない。
状況描写だけで物語が進んでいくんですよね。
全編を通して言えるのは、とかく不親切で余計な説明を一切しない作りだということ。
なので幾通りもの解釈や、想像が成り立ってしまう。
今時珍しいぐらい観客を突き放してまして。
ま、おそらく賛否はあるんでしょうけど、私はどっちかというとこの手の想像力を試されるような映画は割と好きな方でして。
ジャンルにもよるんですが、意味不明に煙に巻くようなやり口は面倒くさいんでお好きな人たちに任せておきたいところですが、本作のようなサスペンスの場合、現実的帰着が必要とされるわけですから(デビッド・リンチは例外として)、これ、観察眼というか読解力を試されてるな、と逆に気持ちが高ぶってきたりもする。
で、そのあと、この映画は計画的にこういう構成なんだ、と気づいたのが中盤。
なぜ夫婦は少女を引き取ったのか、二人の会話の内容からさりげなく動機を示唆。
きっちりお膳立てを整えることが、すべての観客にとって誠実だというわけでもあるまい?とした姿勢に映像作家としてのセンスを感じる。
決定的だったのは終盤のあるシーン。
人家の扉を開けた瞬間、突然世界が変転するんです。
詳しくは書かないけど、こういう形で種明かしをする手法もあるのか、と少し鳥肌がたった。
やってること自体はセオリーから外れるものではないんですが、それを「扉を開ける」という「動的な所作」につなげる演出に舌を巻きましたね。
この監督はちょっとすごいんではないか、と俄然前のめり。
正直ね、ちょっと駆け足すぎやしないか?と思う部分や、いくらなんでもここはきちんと説明というか、キャラクターの内面を描いた方がいいんではないか?と感じるところもあるんですけど、明かされた真相の衝撃度と、巧みな構成、演出がすべてを上回ったように思います。
あと、少女がエンディング間近のシーンで、勇気を振り絞って歩みだすシーンがあるんですが、これがもうやたらと感動的で。
衝撃的なだけじゃなく、泣かせもするのかよ、と。
いや、鮮やかな107分だったと思いますね。
私のNETFLIXベストは長い間バード・ボックス(2018)でしたが、この作品は比肩する出来と言っていいかもしれない。
あんまり知られてないばかりか、それほど高く評価もされてないのが信じられないですね。
ネットで漁っても全然情報が出てこないんですがイグナシオ・タタイ監督、要注目なように思います。
スペインって、なんか知らんが時々すごいサスペンスを輩出してくるなあ。
いや、面白かった。
余談ですが、本作、アレックス・デ・ラ・イグレシアが一枚噛んでるみたい。
プロデューサーか?
ねじレート 91/100

