土星マンション

2006年初出 岩岡ヒサエ
小学館ikkiコミックス 全7巻

地球全体が自然保護区となり、人類のほとんどが地球を円環状に取り囲む成層圏のステーション(土星マンション)に暮らす時代、ステーション外壁の採光窓を拭くのを生業とする少年を描いた未来SF。

プロットは独特だと思いますね。

こんなことが実現可能なのかどうかは別として、地球を取り囲むリングに住む人類の話なんて、漫画であまり見かけた記憶がない。

SFならではの壮大さがあり、絵(映画でもいいけど)で表現するには恰好の素材だな、なんて思ったりもする。

ただですね、スペクタクルな設定とは裏腹にこの作品、ストーリー自体は恐ろしく地味なんですよね。

綴られているのは主人公の少年が窓拭きとして一人前になるまでの成長物語。

怖い親方や先輩に囲まれながらも、徐々に頭角を現していく様子を、ホームドラマサイズで涙と笑いに包み追っていきます、ってな感じ。

いや、これ、地球上でもできるお話じゃん!って。

ブルーワーカーが己の仕事に誇りを持って、プロフェッショナリズムに徹する生き様とかね、読んでてぐっとくる場面もいくつかあるんですけどね、なぜこれを成層圏のステーションでやらかさねばならん?と私はいささか疑問。

別に謎と陰謀にまみれたアクションじゃないと駄目だと思ってるわけじゃないですが、物語環境が大風呂敷な割にはあまりにも内容がこぢんまりしてるというか。

どういう場所に暮らそうと人の営みは変わらない、と作者は訴えたかったのかもしれませんが、できうることなら主人公の少年に、少年らしい大きな夢を抱かすぐらいのことをやったほうがお話は広がりを見せたと思うんですよね。

「一人前の窓拭きになることが夢」って、いいですよ、別にいいんですけどね、あんまりそういう少年は主人公として抜擢されたりはしないですよね、うん。

終盤にいたって、禁止されている地球への降下をそそのかされ、若干ストーリーは盛り上がりを見せるんですが、これもなあ、終わってみれば発想の飛躍、驚きに欠けるオチで締めくくられててなんとも近視眼的で。

あとは絵柄ですかね。

丸まっちいキャラ造形とか、なんだか昔の児童漫画みたいというか、藤子先生なのか?みたいな。

好き嫌いが分かれる気がします。

ドラマ作りは達者だと思うんですが、SFを期待すると肩透かしを食らいそうな一作。

嫌いじゃないですが、この人の本領はこの手のSF向きじゃない気もしますね。

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