アメリカ 1991
監督 メル・ブルックス
脚本 メル・ブルックス、ルディ・デルカ、スティーブ・ヘイバーマン
同じ土地を買収しようとしている競合相手に「1ヶ月間、何も持たずにスラム街で生活することができたら事業計画は諦める」といわれ、つい口車にのってしまった資産家の、無謀な挑戦を描いたコメディ。
似たような内容の映画にジョン・ランディスが監督した大逆転(1983)ってのがあって、そっちのほうが有名かな?と思うんですが、こちらも負けず劣らず最高に面白いです。
メル・ブルックスといえばそのフィルモグラフィーのほとんどが名画のパロディ、リメイクなわけですが、この作品は数少ない完全オリジナルでして。
そのせいもあってか、いつも以上に気合がはいってるように私には感じられるんですよね。
私のレーティングではこの作品がブルックス後年の頂点ですね。
まあ、とにかくはずさないです。
床にぶちまけた米粒並に笑いの地雷がそこかしこに仕掛けられてるんですけどね、一切スベらない。
いちいちバカバカしくて腹筋を直撃する。
アメリカのコメディって、何が面白いのかまるで理解できないパターンも往々にしてあるように思うんですが、この映画に関してはそんな心配は全く必要ないですね。
95分間、最後まで徹底的に笑わせてくれます。
また、笑いだけに拘泥するのではなく、物語がちゃんとしてるのも素晴らしくて。
今となってはいささか古臭いパターンだと言えるかもしれませんが、人を人とも思わぬ大富豪が情けに触れ、弱者の視点に立って世の中を見つめ直すストーリー展開はわかっちゃいても心動かされるものがあって。
さらには、そこにラブロマンスまで放り込んでくるんですね、監督は。
ああ、これはチャップリンだ、と私は思った。
ニューヨークの喜劇王と言われたブルックスですが、誤解を恐れずに言うならこれはブルックスなりの元祖喜劇王チャップリンへのオマージュだったのではないか、という気もしましたね。
主演を兼ねたブルックスの熱演も必見。
終盤の取り乱しっぷりなんて本職の役者以上。
見ているうちに、いつしか初老のむさくるしいオッサンをどこか愛らしく見せてしまう演出力もお見事。
個人的にはコメディ映画といえば必ず思い出す1本ですね。
古典的、といえばそうなのかもしれませんが、それでもあえて推したい次第。
ブルックスを知らない人にはぜひ見てほしいですね。
さんざん笑わせられた後にささやかな感動が待ってる傑作だと思います。