アメリカ 1966
監督 リチャード・フライシャー
脚本 ハリー・クライナー

冒険SFの傑作として名高い一作。
やっぱりなんと言っても凄かったのは「人間ごと潜水艇を縮小して人体の内部を潜行する」というアイデイアでしょうね。
細菌大にミクロ化した状態にあっては体内ですら小宇宙となりうる、とした視点はまさにSFというジャンルの想像性を推し広げたものに他ならなかったように思います。
縮小化できるのは60分だけ、としたルール作りもうまい。
さらには、そんな危険なミッションに参加するメンバーにスパイが紛れ込んでるかも、としたシナリオ作りに至ってはそのダメ押しの周到さに舌を巻かんばかり。
どこか幾何学的な血管内部の描写も、66年という時代を鑑みるなら驚異的だった、と思います。
医学的考証をないがしろにせず、できうるかぎり忠実に可視化しようとする試みがきちんと伝わってくるのが素晴らしい。
さらに私が感心したのは、普通ならいちいち盛り込まないだろうと思われる縮小化のシーンを、観客の疑問、ひとつひとつに答えるかのように順を追って丁寧にその段取りを説いてみせていること。
つまり、荒唐無稽をささえるための背景に監督は恐ろしく気を使ってるんですね。
それが作品にスリルと緊張感をもたらしていることはいうまでもありません。
ただですね、あえて重箱の隅をつつくようなことを言うのなら、いくつか矛盾を感じる点もないわけではないんです。
特に最後の脱出シーン、あんなものを放置したまま脱出して本当に大丈夫なのか?と疑問が残った人も大勢いたのでは、と思われます。
そこにひっかかっちゃうと他にも色々気になりだしてきてなんとなくすっきりしない、なんてことになりそうですが、まあ、そこはあえて目をつぶりましょう。
そんなことでこの作品を楽しめなくなってしまうのはあまりにもったいない。
私はどこか見知らぬ外宇宙の惑星を乗組員とともに旅しているような気分になりましたね。
名作の看板に偽りなし。
余談ですが、体内をミクロ化して潜行するというアイディア、実は手塚治虫が先だったとか。
私の記憶ではそんな作品あったかなあ、って感じなんですが、こういうところにも名前が出てくるってのがやっぱり凄いな漫画の神様、と全く関係ないことに思いを馳せたりもしました。