ドールハウス

2025 日本
監督、脚本 矢口史靖

突然の事故で、娘を亡くした主人公母親のもとに、導かれるようにやってきた日本人形を巡る怪異をつづったホラー。

いやこれを矢口史靖が監督脚本してる、というのがまず驚きですね。

全然作風が違うやん!って。

つっても私はウォーターボーイズ(2001)とスイングガールズ(2004)しか知らないんですけどね、すまん。

でもそういう映像作家ですよね?どっちかというと心温まるハッピーな作風というか。

えっ、大きく間違えてないよね?

観る前は、なんせ矢口だから、ミステリといえど、それほどシニカルでもシビアでもないはず、などと考えてたんですけど、終わってみればこれ、ミステリどころかど真ん中ホラーやないかい!と唖然。

どうした矢口、なにがあった?とマジで少し心配になったほど。

しかもこれ、人形ホラーとしては王道の系譜をたどってたりするんですよ。

ご存じの方も多いとは思いますが、この手の人形ホラーで間違いなく最凶なのは稲川淳二の怪談「生き人形」で、他に私が震え上がったのは山岸涼子の「私の人形は良い人形」ぐらいでね、ともかくそれらの破壊力が凄すぎたもんだから(映画以外の媒体の方が人形ホラーに関しては活発だった)長らく映像はめぼしい作品が発表されてなかったように思うんです。

もちろん海外の映画作品で人形が大活躍するホラーはたくさん発表されてました。

でもやっぱり洋人形の恐怖ってね、違うんですよね、国産ものとは。

チャッキー(チャイルド・プレイ:1988)を思い浮かべてもらえば、その差は一目瞭然だと思います。

怖さの質が違うんですよね、私に言わせるなら。

で、そんな中、今になって、まさか矢口監督が正統なる日本人形ホラーの大作をものにしてくるなんて予想だにしてなかったわけで。

やっぱり笑いとホラーは紙一重なのかなあ、なんて思ったり(楳図かずおのように)。

もうね、序盤から中盤ぐらいまで、人形ホラーの鉄板と言ってもいいパターンを見事に踏襲、繰り広げてますからね。

曰く、勝手に動く、曰く、髪と爪が伸びる、曰く、捨てても帰ってくる。

これを21世紀にもなって、恥ずかしげもなく堂々とやるか?ってなぐらい(褒めてるんです)。

あまりに王道すぎて私なんざ常時ニヤニヤが止まらなかったほど。

中盤以降の、うさん臭げな人形供養の専門家が登場してからの展開もまさにツボ。

いやもう、韓国ホラーかよ、って。

エンディングも秀逸。

ああ、良かったね、救われたね、ってほのかに感動させておきながらのどんでん返しですから。

ホラーとしての完成度は実に高い、と思いますね。

ただ、人形ホラーとして日本の他のメディア全体を見渡すなら、この作品、目新しいことは何一つやってないのは確か。

意外性はほぼない、と言っていいでしょう。

けれどそれがネックにならない。

誰も日本人形で本格ホラーを撮らなかった現実がある以上、この作品が試金石、分水嶺になる可能性は非常に高いと思いますね。

盲点をつく一作、と言っていいのではないでしょうか、映像作品における不在という意味で。

あとはホラー映画の方法論というか演出みたいなものに、もう少し馴染んでくれれば、ってところですかね。

ジャンプスケアがね「お手本どうりにやってみました」って感じなんですよね。

教科書に忠実、って感じで。

特に、大きな音で驚かせる、ってのはどうだろう?と思います。

それって恐怖じゃないですから。

単にびっくりしてるだけですから。

ま、矢口監督が次もホラー撮るのかどうかわかんないですけど。

私にとっては予想外な収穫でしたね、この作品。

むしろホラーファンにこそ歓迎される一作では?と思います。

余談ですが、長澤まさみはあんまり良さが出てない気がしました。

うまいんですけどね、なんか似合ってない。

ねじレート 80/100

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