2025 香港
監督 ソイ・チェン
脚本 アウ・キンイー、チャン・タイリー、サム・クァンシン、ジャック・ライチュン

圧巻の大活劇だが、目新しさはさほどない・・のが、良いのか?
九龍城砦の覇権をめぐる争いを描いたアクション大作。
「あの頃の香港映画が帰ってきた!」と本国のみならず日本でも大きく話題になった一作ですが、個人的にはそれほど高ぶってなかったりはします。
ま、確かにあの頃の香港カンフー映画だとは思います。
9億円かけて再現された九龍城砦はデティールに至るまで見事な出来栄えだし、序盤からフルスロットルのアクションシーンも「これ、人死んでるだろ」と思えるような過激さでしたし(ジャッキーの映画でありがちでしたよね)。
シナリオも原作があることが功を奏したか、思いのほか隙のない仕上がりだったと思います。
いかにも香港映画なルーズさが目立たない、というか。
ただね、あの頃の香港映画の帰還を喜ぶのもいいんですけど、あの頃を超えていかなきゃ未来はないんじゃないか?と私は思うんですよね。
映画の完成度は高いと思います。
でも、なにか新しい切り口があったのか?と問われれば、いや、あの頃のままだった、と答えるしかないように思うんです。
身も蓋もない言い方をするなら、やってることは武侠映画というかヤクザ映画と物語構造は同じだと思うんですね。
世話になったアニキのために命はりますぜ!的な。
そういうのが嫌い、というわけじゃないですが、どうしてもね「もうその手のはさんざんやっただろ?」と思っちゃうんですよね、私は。
それが証拠に、やばいぐらいストーリーの先読みができちゃって。
主人公チャン・ロッグワンの正体とか、序盤で確信できてしまいましたし。
嫌な言い方になってしまうんですが、やはり意外性がないな、って。
ロンギュンフォン(ルイス・クー)がなにもかも全部もっていくような描かれ方をしてるのもちょっと疑問。
やっぱりサモハンやルイス・クーは助演で、縁の下の力持ち、ぐらいでちょうど良かったと思うんですよ。
大御所二人がものすごい存在感なものだから(これは役者の力量の話じゃなくて)、二人の関わらない終盤のクライマックスがなんか妙に熱量低下しちゃってて。
気功使いのウォン・ガウなんて二人に比べりゃほとんどギャグだと思うんですよね、なにやらめちゃくちゃ強いやつとして設定されてますけどね。
本来なら主人公チャン・ロッグワンと敵対するウォン・ガウの物語でなきゃいけないはずが、すでに現役とは言いずらい最強初老二人の昔語りになっちゃってるんですよね。
で、そういう部分にこそ懐古主義的作風が透けて見えるというか。
原作に忠実なだけではこうはならない気がします。
単にリバイバルでよかったならそれでいいのかもしれない。
けれど、香港映画の未来を危ぶむなら、そこでとどまってちゃいけないと思うんですね。
なにか新しいものを見せてくれるに違いない!とかってに期待した私が間違ってたのかもしれませんが、最後まで見て、やっぱり香港映画はかつてないほど厳しいのかもしれんな・・と思ったのが正直なところ。
本場香港のカンフー映画を谷垣健治がアクション監督してることに関しては新時代を感じたりしましたが。
あれこれ考えなきゃ楽しめる一作だとは思います。
続編あるみたいですが、その余波で香港映画界が活況を呈するようなら私の考察はズレてることになるわけで、どっちかというとそっちの方がいいのかな、と今ちょっと思ってます。
あと、中国政府の検閲というか横やりがどれほどのものなのか?も考慮すべきなんでしょうね。
私が考えている以上にいろんな事情があるのやもしれません。
うーん、なんだか一概に「こうだ」とは言いにくくなってきたなあ・・・。
ねじレート 76/100

