侵蝕

2025 韓国
監督、脚本 キム・ヨジョン、イ・ジョンチャン

粗暴で残酷、かつ平然と嘘つくという、『子供だから』で済まされぬ異常性が顕著な女児と、その母の20年を描いたサスペンス。

物語は二部構成になっていて、前半が女児の子供時代、後半が20年後に章立てされてます。

私は本作の監督であるキム・ヨジョン&イ・ジョンチャンのコンビを全く知らなかったんですが(どうでもいいけど総書記の妹と同名やないかい)前半30分ほど観ただけでその力量に感服

子役の演技が優れてた、ってのももちろんあるんですが、サイコパスな娘に振り回され疲弊する母のドラマを迫真の作劇で演出してて。

サスペンス見るつもりで視聴してますから、当然その手のミステリを期待してたんですけど「いや、もう、このお母さんと娘がこの先どうなるかを描いてくれるだけでいい」と思えてくるほどに、目の前の進行へとぐいぐい引き込まれていく私。

こりゃかなりの実力派だな、と。

どういう経歴を持つ二人なのか、調べてみても何も出てこないんで判じようがないんですが、こういう映像作家がふいに現れるのが韓国映画界の凄みだよなあ、って。

だってね、前半だけ見てたらまるで是枝映画みたいなんですよ(異論は認める)。

なんで急に現れてこんなことができちゃうの?と思うじゃないですか。

また、痛切なドラマで視聴者を虜にしておきながら、それをあっさり袖にして20年後に飛ぶ展開もなんとも小憎らしくて。

ここまで場を温めておきながら、仕切りなおすの?マジで?みたいな。

相当な自信がなきゃできないと思うんですよね、こういうのって。

正直、真正面からだまされたのは確かです。

見事に仕掛けにはまったというか、ミスリードにひっかかったというか。

だってまさか映画で、こんな風に叙述トリックみたいなことをやってくるとは夢にも思わなかったものだから。

多分、8割から9割の人が間違えると思う(すぐ気づく人も含めて)。

ああ、これがやりたかったから仕切りなおしたのか、と。

これはずるいよ、こんなの絶対勘違いするし!と思ったりもするんですけどね、脇が甘かったいいわけにしか聞こえない気もして。

で、それを種明かしとしてあっさり終わらなかったのがこの監督コンビの一筋縄でいかない点で。

エンディング、予想外のシーンが待ち受けてます。

誰からも愛されなかった子が、最後の最後にこんな形で救われるのか、と思わせておきながら、さらなる断絶を残酷に活写

なんなんだこの突き落とし方は、と。

そこに横たわるのは、努力を重ね、無私で献身したところで、絶対的な無理解で答える『異形』は確実に存在する、という真っ黒な絶望。

いやはや圧倒されましたね。

救われぬことこそが救いであるというやるせなさがここまで正しい作品も珍しい。

見応え十分な秀作だと思います。

次作が楽しみで仕方ない。

韓国映画、恐るべし。

ねじレート 90/100

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