韓国/アメリカ/フランス 2013
監督 ポン・ジュノ
原作 ジャン=マルク・ロシェット、ジャック・ロブ
フランスで大ヒットしたコミックを映像化した作品。
とりあえず物語序盤はかなり辛いものがありました。
温暖化対策に失敗して氷河期を迎えてしまった地球における人類の生き残りが鉄道に乗って全世界を周回する、 と言う世界観にどうしても私はのれなかった。
何ゆえ鉄道?
資源がないのになぜわざわざ列車を走らせる?
普通は動かさないだろ、と。
それ以前に太平洋を縦断して走る列車って、どこまでオーバーテクノロジーなんだと。
いやいや国家間の利害関係をどうやってクリアしたんだ、と。
そんなのが2014年に実現してるはずがなかろう、と。
ましてやその18年後の話、って、一切止まることなしで列車や線路のメンテナンスはいったいどうしてるんだ、と。
銀河鉄道以上にファンタジーです。
妄想に近いよなあ、とすら思いました。
ただね、先頭車両と最後尾の車両の間で階級社会が成立していた、という設定は、あ、なかなかおもしろい、と思ったんです。
これを例えば宇宙船とかに置き換えるなら、かなり好みのタイプのSFであることは間違いない。
ですんでね、とりあえず矛盾点には一切目をつむって先を見進めることにした。
そしたらですね、これが不思議なもので時間が経過していくごとにどんどんおもしろくなってくるんですよね。
先頭車両を目指して最後尾からひとつづつ車両を進んでいく主人公、進むたびに明かされていく列車世界の謎。
メイソン首相役のティルダ・スウィントンの怪演が強烈です。
もう夢に出てきそうな嫌なババアキャラ。
よくぞここまで作りこんだものと思う。
狂気漂う小学校(幼稚園?)の車両のシーンもお見事。
濃厚なファシズムの香りに肌が粟立ちます。
圧巻はやはりエンディングでしょうね。
完全な自給自足を成り立たせるために徹底して管理された閉鎖社会の真実を知り、心惑わされる主人公とウィルフォードのやりとりは見ていてこりゃ凄いシナリオだ、と思いました。
生き残るために何を選択して、何をなすべきか、観客に問いかけるその姿勢は、久しぶりに本格SFを見た気にさせてくれました。
その後を暗示するかのようなラストシーンも素晴らしい。
荒唐無稽すぎる、と引いてしまったらもうダメかとは思います。
でもそこをあえて付き合ってやれば、近年まれに見るよくできたSFとして深い満足を得られるのではなかろうか、と私は思います。
まあ元々ポンジュノは実力あるのに変な笑いに走ってすべる傾向のある監督ですんで、それがわかってる人はね、充分許容範囲内ではないでしょうか。
手放しで傑作!とは大絶賛しにくいですが、私はこの作品、強く記憶に残りましたね。