2025 アメリカ
監督、脚本 オズグッド・パーキンス

乾いた笑いが漏れる、一筋縄でいかないホラー
ねじを巻きドラムをたたかせると、近くにいる人間の死を誘発する悪魔の玩具を描いたホラーコメディ?
猿の玩具自体に意思はなくて。
呪いの志向性や事象の独自性みたいなものはなく、ただ結果として誰か死ぬということだけが決まってる、いうなれば呪具みたいなもの、と考えていいと思います。
物理で推し量れない道具ですね、単純に。
ただこの猿、捨てても破壊しても元の姿に戻って拾った人間のもとに帰ってくる、という習性があり、そこはよくある人形怪談みたいだったりはする。
でまあ、プロット自体は珍しくも斬新でもないわけです。
むしろ手垢なホラーと言った方がいいかもしれない。
これで怖がらせようと思うのは相当難しいぞ、と私は見る前から結構警戒してたんですが、これがどうしてどうして、手垢どころかぐいぐい引き込まれていく面白さでびっくり。
前作ロングレッグス(2023)が好評だったオズグッド・パーキンス監督ですが、その力量が偽りではなかったことを見事証明してきたと思いましたね。
上手だったのは、中途半端なジャンプスケアや恐怖演出で安易に怖がらせようとせず、むしろ淡々と、そして即物的に、死の連鎖を描写していったこと。
それでいて死に方だけは、スプラッターホラーファンにも希求する勢いでやたら毎回工夫されてたりするんですよ。
不謹慎だ、って怒られそうですけど、こうも簡単にバンバン人が死んでいくとなんだかもう、逆に笑えてきちゃって。
どんだけ命が安いのか、みたいな。
それをパーキンスらしい乾いた質感の静謐な作風で彩ってくのがどうにも可笑しくてねえ。
この人は自分のやり口すら笑いを喚起する手段とするのか、って。
この手のブラックユーモアって、サム・ライミが得意そうに思うんですが、そこにウェス・アンダーソンのしらばっくれた感じを足したかのような案配でね。
白眉は終盤の兄弟が対峙するシーン。
黒い笑い中心の悲喜劇が、ふいに温度を高めてドラマチックに盛り上がるんですが、次の瞬間、見事に全部台無しにしてくるんですね。
外に目をやれば、ハルマゲドンが勃発したのか、ってな様子で荒廃する町。
意地の悪さが織りなす絵面の非現実感にあたしゃノックアウト。
エンディングなんてクロスロード(ロバート・ジョンソン)かよ、と思いましたしね(多分関係ない)。
忌まわしさの肌触りを感じながらも、どこかスラップスティックにも思える、ってどういうことだ、と。
天才肌の作風だと思います。
オズグッド・パーキンス、将来的にすごい映画撮るかもしれない。
確かにホラーなんだけど、安易にジャンル分け出来ない一作だな、と思いました。
前作もすごかったですけど、本作も文句なしの良作。
スティーブン・キングの短編をこうも独特に仕上げたセンスに脱帽ですね。
ねじレート 90/100
