ラビッド

カナダ 1977
監督、脚本 デヴィッド・クローネンバーグ

ラビッド

先進的な医療を試したがため、肉体に変異を起こしてしまった女が、無差別に血を求め、次々と感染者を増やしていく、という、吸血鬼を下敷きにしたパニックホラーなんですが、とりあえず初期設定がかっ飛びすぎですよ、監督!と言ったところでしょうか。

いくらなんでも皮膚を中性化して移植したぐらいで人はパンパイアにはならんだろ、というつっこみが一斉に聞こえて来るようです。

ましてや脇の下に吸血するための肉芽はどう考えたって生えてこない。

ナノテクノロジーでも無理だろう、という気さえしてきます。

ただですね、独特の厭らしさ、生々しさともなう「肉の変容」の描き方はクローネンバーグならではだな、とは思いました。

どこか男性器を想起させる部分もあったりしてですね、これは性の暴力に対するアイロニーみたいなものなのかな、と思ったりもしましたが、そこまで深く行間を読み取るほどの内容でもなくて、まあ、これは監督の特質みたいなもんでしょうね。

さらに感染の規模を大きくしていけばもっと緊張感も増したか、と思ったりしましたが、エンディング、思わぬ展開で物語は終息。

いささかとってつけたような印象はありますが、無自覚と無知が招く、幼い精神の無謀な試みを描いたその顛末は、もの悲しく胸に迫ります。

後の名作に並ぶほどではありませんが、クローネンバーグという監督を知る上で興味深い作品であることは確かですね。

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