上へ下へのジレッタ

上へ下へのジレッタ

1968年初出 手塚治虫

今はなき漫画サンデーに連載された大人向け長編。

飯を食わないと絶世の美女に人相が変わるヒロインを、なんとか芸能界に売り出そうとする主人公のドタバタ奮闘記、といった按配の物語なんですが、途中からストーリーは、突然「ジレッタ」と呼ばれる1人の妄想の世界に不特定多数の人がアクセスするストーリーに何故か変わっていきます。

要は精神世界へサイコダイブする、ってことなんだろうと思うんですが、本来なら、誰の精神世界に飛び込むか、ではなく、いかにしてその接続方法を普遍的にしたか、というハード面をまずクリアすべきなのに、先生はそこを個人の才能みたいな描き方をしておられるのでどうにも話がすっきりしないし、わかりにくい、っていうのはありますね。

多くの人間がジレッタに熱中する、という設定もいまひとつ解せないものがありますし。

オチも凡庸。

最後まで晴海なぎさのストーリーにすれば良かったのでは、と思う次第。

迷走の末、着地点を見誤ったか、と言う印象は残ります。

ただ、私の読んだ本作は、講談社の全集のバージョンであり、他に完全版と称された単行本も出版されているようです。

これはエンディングが違っているとか。

この作品を支持する人も多いので、読み比べて見るのも一興かと。

先生の作品は単行本化に際して改稿されることがほとんどなので、その違いを本来なら検証すべきなんでしょうが、私、さすがにそこまでは熱心に取り組めません。

ごめんなさい。

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