ほえる犬は噛まない

韓国 2000
監督 ポン・ジュノ
脚本 ポン・ジュノ、ソン・テウン、ソン・ジホ

とある団地で起きた、連続子犬失踪事件にまつわる騒動を描いたコメディ。

主人公は団地の管理会社に務めるヒョンナム。

この娘がもう、とにかく落ち着きがなくて。

単調なデスクワークより、外に出てなんだかんだやってたいタイプ。

ま、一言で言うなら幼い。

私は最初、女子高生がアルバイトで管理事務所に勤めてるのかな?と思ったぐらい。

物語はそんなヒョンナムが、探偵よろしく「消えた子犬の謎」を追っていく展開で進んでいくんですが、じゃあミステリっぽいのか?というとそうでもなく。

犯人の面、最初から割れてます。

観客は、犯人とヒョンナムの一向に距離が縮まることのない「すれ違い」を楽しむ趣向となっていて。

そこに無関係な登場人物があれやこれやと賑やかしで登場してくる。

なんとなく80年代日本のテレビドラマ的質感がありますね。

マンモス団地に入居者が列をなした狂騒的な時代が少し落ち着いた頃を描いた、こんな団地ドラマなかったか?みたいな。

私が面白いな、と思ったのは食文化の違い。

なんせ韓国、犬食文化がありますから。

飼い主の居ない犬を見つけると、捕獲して食っちゃう連中がいるんですね。

かたや犬をペットとして愛玩する人間もいれば、犬が食べ物にしか見えない人間もいる、とした表裏一体の作劇は独特のおかしさを醸していたように思います。

愛犬家な方々は激高しそうですけどね。

ぶっちゃけ他愛ない内容といえば他愛ない内容なんですけどね、いかにも韓国映画らしいドギツさより、どこか全体的に可愛らしい印象を受けることに私は好感をもってて(犬、食ってますけどね)。

白眉はヒョンナムが、浮浪者の鍋に放り込まれようとする犬を単身、奪還しようとするシーンでしょうか。

おそらくCGだと思うんですけど、こういう演出をするのか!私は少なからず驚かされた。

これ、男性の感覚じゃないです。

ほぼ同じ絵を、私は80年代の少女マンガ誌で目にしたことがあるんですけど、それを映画でやってしまうポン・ジュノのセンスに唸らされましたね。

乙女じゃん!みたいな。

いささか残念だったのは、物語がどこへも着地しなかったことですが、不思議とストーリーの断片が記憶に残った作品でしたね。

しかし、つくづく守備範囲が広い、ポン・ジュノ。

デビュー作がこれで、のちに怪獣映画や母なる証明(2009)のような重厚な大作までものにしてしまうんだからほんと恐ろしい監督だ。

ちなみにこの映画、原題は「フランダースの犬」。

日本のアニメが韓国でも放映されており、当時、最終回は町から人が居なくなってしまったほど人気を博したらしいんですが、はて?この映画のどこにパトラッシュが?

とりあえず聖画を前にして、誰かが天に召されたりしなくてよかった、と胸をなでおろす次第です。

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