プラネテス

1999年初出 幸村誠
講談社モーニングKC 全4巻

2074年の未来、宇宙空間にてデブリの回収を生業とする宇宙飛行士、ハチマキの見果てぬ夢を描いたSFアドベンチャー。

とりあえずデブリ回収員を主役に据えるという設定が斬新だし、科学を無視しない宇宙時代の描き方も「ちゃんと勉強してるなあ」と感心させられるものでしたし、のちの星雲賞受賞やアニメ化も納得の一作ではありましたね。

なんといっても画力が高い。

それでいて適度なユーモアもあり、ドラマ作りにも長けている。

これが売れなきゃSFはもう首くくるしかない、ってレベルにあることは確か。

90年代初頭以降、本格的なSF漫画が死に体になって、何年も経ったときに突然現れた新星ですから、そりゃSFファンとしてはうれしくないわけがなくて。

発売当時は貪るように読んでましたね。

ただ、改めて読み返して見るなら、テーマが絞りきれてなかったかな、という気がしなくもありません。

なぜ人は危険を犯してまで「もっと遠くを」目指すのか、その理由を宇宙の深淵にて我々に語りかけて欲しかった、と私は思うんです。

人類未到達な太陽系の辺縁には何があるのか、それを自己完結ではなく、別の視点から見渡すことも可能だったのでは?という気がするんですね。

割とね、ホームサイズで物語は閉じてしまうんですよ。

多分作者はとてもロマンチックで心優しい人なんでしょう。

それはまあ別にいいんですけどね、ただこのオチだとですね、ガチのSFファンは「あれ、なんだかスカされた」と思ったんじゃないか?と。

物語終盤で登場した男爵の存在とかね、凄いところにストーリーが飛躍しそうな気配があっただけに、いささか残念。

良質な一作なのは間違いないですが、ここを踏み切り台としてさらに挑戦を、といったところでしょうか。

宇宙SFとはなんぞや?と疑問を抱く人にとっては最良の入門書かもしれませんけどね。

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