アメリカ 2018
監督、脚本 ドリュー・ピアース
まず、恐ろしく老けたジョディ・フォスターにびっくりさせられます。
いつの間にこんなおばあちゃんに!と腰抜かしたんですが、さすがに57歳でここまで皺くちゃってのもありえないと思うんで、多分これは老け顔メークなんだろうと。
多分ね。
だって52歳のニコール・キッドマンがアレですしね、アクアマン(2018)でヒロインを食わんばかりの若々しさを弾けさせてるわけですから、いくらなんでも差がありすぎるだろうと。
そこで感心したのは女優として、若さにこだわること無く、役柄に徹してみせたジョディのプロ気質ですかね。
普通は誰しもが「若々しく綺麗に撮って」と心の底では願ってるはずだと思うんです。
それを大女優たるジョディが、こだわりを捨ててあえて老け役に挑むってのは本当にすごいことだよなあ、と。
ある意味、自信の裏返し、と言えるのかもしれません。
私は見てくれよりも演技で勝負する、みたいな。
いやはや男前だ、かっこいい。
実際、つらい過去を背負った老医師という配役を、抜群の存在感で演じてますしね。
しかし、ジョディが5年ぶりの銀幕復帰にこの作品を選んだ、というのもなんとなくわかりますね。
本作、どっちかというと昔のタランティーノが得意そうな、悪党ばかりが登場する群像劇で、さほど目新しくもないんですが、監督は個性的なキャラクターを使い回すのが上手だし、台詞回しも達者。
小さなドラマを大きな物語の流れに編み込んでいくのもうまい。
ありていに言うなら映画作りのセンスがあるんですよね。
わかりやすい手法ながら、ちゃんとツボを抑えてる、と私は思った。
惜しむらくはこれをたった94分でまとめちゃったこと。
2時間とは言わないですけどね、この内容ならもう少し尺が必要ですよ。
ジョディ演じるジーンと警官の挿話なんてもっともっと内容膨らませそうですし、終盤のどんでん返しにしたって展開が早すぎて驚く余裕もなかった。
ソフィア・ブテラ演じるナイスも、もっと見てたかった、と思いましたしね。
細かな演出にもう少し時間をかけることが出来たら、傑作と言い切ることもやぶさかではなかった。
監督の才覚は見事発露してるんですが、なにかと惜しい、その一言ですね。
ジョディはドリュー・ピアースとの接見を経て、なにか嗅ぎ取ったのかもしれませんね。
「この男はやるかも・・」みたいな。
いや、知らないですけどね。
湿っぽい傷の舐めあいを排除したラストシーンといい、私はこの映画、嫌いじゃないですね。
興行収入は思わしくなかったみたいですが、次のチャンスを与えてあげてほしい、そんなふうに思いましたね。