アメリカ 2018
監督 マイケル・ケイトン=ジョーンズ
脚本 ジェイ・ザレツキー
老いた殺し屋の、老いらくの恋を描いた作品。
はっきり言って、既視感満載の意外性ゼロなシナリオ進行が「またか・・」と脱力を招く内容ではあるんですが、なんとなく最後まで見れてしまうのはロン・パールマンが主演を努めているという珍しさからか。
キャスティングの難しい役者だと思うんですよ、パールマンって。
私のイメージでは未だロスト・チルドレン(1995)であり、ヘルボーイ(2004)ですから。
人間から遠い役柄であればあるほど真価を発揮しそうな。
ものすごく失礼なこと書いてますが、いや、ファンなんですよ、マジで。
主演向きじゃない、っていいたいだけ。
うーん、殺し屋なあ。
ミスキャストなんじゃないかなあ、って。
半ば怖いもの見たさで手にとった節もあるんですが、これが意外や意外。
思った以上に役柄にはまってて驚きましたね。
ロン・パールマンも歳をとる、ってのを私は失念してたようです。
怪奇派レスラーか、ってな風貌が、なにやらすっかり毒気も抜けちゃって。
監督がそう見えるように心砕いたのかもしれませんが、少なくとも違和感はなかったですね。
むしろ妙なリアリズムが立ち上っていたりもして。
老いたとはいえ、巨躯を持て余す感じが秘めたる暴力の匂いを漂わせてるんです。
実は目端の利いた抜擢だったのかも、と後から思ったり。
血なまぐさい世界に身を置いてきた老骨の不器用さ、一般常識の欠落ぶりを描く上でも、どこか異形を感じさせる彼の佇まいは効果的でしたね。
なんだかもう美女と野獣みたいになってますし。
また、日常的に見ず知らずの人間をあの世に送ってる男に、痴呆老人の介護問題を絡めてくる脚本家のセンスもいい。
なんだよ、このブラックユーモアは、とちょっと笑ったりもした。
力の論理だけで最後まで乗り切ろうとしてないのも美点ですね。
えてしてこのタイプの映画って、主人公を超人に仕立て上げちゃうものですが、いや、持病持ちのじじいだから、って目線がブレないんです。
だから胡散臭さも最小限に抑えられてる。
最初に書いたようによくあるパターンの映画なんですけどね、枠組みの中でベストを尽くしてる気はしますね。
だから枠を壊せよ、と言われればそれまでなんですが。
不思議と嫌いじゃないですね。
パールマンのファンは楽しめる一作じゃないでしょうか。