アヴリルと奇妙な世界

フランス/ベルギー/カナダ 2015
監督 クリスティアン・デマール、フランク・エキンジ
原作 タルディ

アヴリルと奇妙な世界

もし、ガソリンエンジンによる第二次産業革命がおこらず、蒸気機関が長期間に渡って発達していたら・・という「あったかもしれないもうひとつの世界」を描いた冒険ファンタジー。

いわゆるSFのジャンルでいうところのスチームパンクですね。

昔、大友克洋が監督したアニメでスチームボーイ(2004)ってのがありましたが、ご覧になってる方はそれを思い出していただければいいかと思います。

世界観は同じ。

さしずめ、そこに宮崎駿リスペクトをプラスしたのがこの作品、と言っていいのではないでしょうか。

もうね、普通に見てるだけでナウシカとかラピュタとか想起させるシーンが満載。

メカのデザインや動きとか、相当な薫陶を受けているように思います。

「まんまじゃん!」と声を上げること数度。

つまりは、ジブリに慣れ親しんだ日本人が見て、楽しめるのは間違いないということ。

しかしまあ宮崎アニメすごいなあ、と言わざるを得ないですね。

遠く離れたフランスにさえ、このような形で影響を及ぼすのだから。

オリジナリティに欠ける、エピゴーネンに過ぎない、との批判もきっとあるんでしょうけど、私はべつに最初はこれでいい、と思うんです。

国産アニメが海外に踏襲されるって事そのものが誇れることだと思いますし、新人監督が誰かに似ちゃうのは爛熟したサブカルチャーの世界においてもう避けようがない。

なにより、宮崎監督ご本人が長い間こういうのやってないですしね。

若手はバンバン盗んで、いつの日にか自分だけのものを形にすりゃあいい。

監督ならではの突出したものはまだはっきりと見えてきませんが、いい年したおっさんを少年の頃のようにワクワクさせてくれただけで充分及第点ですね。

あとは、もう少しヒロインが華のあるキャラだったら・・といったところでしょうか。

仏頂面で下膨れ気味な化学オタ喪女に共感、応援したくなる人ってあんまり多くは居ないでしょうし。

これは国の違いによる美意識の差なのかもしれませんけどね。

別にシータやクラリスのように可憐な少女をキャラ立てせんかい!というわけじゃないですが、作中序盤で一気に10年の時間を経過させてヒロインを大人にしちゃったのは疑問の残る選択だったと思います。

大人の女性が向こう見ずな冒険をする、ってやっぱり現実味に乏しいですし。

同時にラブロマンスを盛り込みたい意図もあったんでしょうけどね、これも「いつそんな感情の芽生える隙が?!」って感じで、とってつけた感は否めない。

結局、少女が活躍してたほうが無難だし、無鉄砲で多少はデタラメでも許されるってことなんだと私は思います。

この手の映画でヒロインに愛嬌は大事。

そんなことを後から思ったりもしました。

次回作に期待したいですね。

フランスのアニメが本家本元ジャパニメーションを凌駕する日がいつか来るのかもしれません。

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