ミスミソウ

2007年初出 押切蓮介
双葉社アクションコミックス 上、下

ぶんか社発行のホラー雑誌、ホラーMに連載された作品ですが、さてこれがホラーかというと微妙に違うような気がする、というのが私の偽らざる心境。

ホラーってのは「恐怖を楽しむもの」と私は思っていて。

故に「怖いか、怖くないか?」というのが私の場合、評価を分ける分水嶺となる。

えっ、充分怖いじゃん、これ?!これが怖くないって、頭おかしくね?と思われる方もおられることでしょうが、私の感覚ではこの作品って、怖さが匂い立つ以前に胸糞悪さが先行してるような気がするんですね。

例えばミヒャエル・ハネケの監督作でファニー・ゲーム(1997)って映画があるんですけど、この映画をホラーだと呼ぶ人は殆ど居ないと思うんです。

突然押し入った強盗にさんざんいたぶられた挙げ句、なんの救いもなく終わる一作なんですけどね、もし胸糞映画というジャンルがあるのなら間違いなく私の中では筆頭たる映像作品。

ハネケがこの映画で何を訴えたかったのか知りませんが、二度と見たくないと思ったのは確か。

スナッフフィルムとなにが違うんだ?と。

いろんな解釈はもちろんあるんでしょうけど、知る気も起こらないというかね。

で、私は本作に、ファニー・ゲームととても近い匂いを感じてたりするんです。

相応の結末が用意されてますんでね、復讐劇としてのカタルシスは得られるかもしれませんが、結局は作者が、少年少女を素材に、凄惨な殺し合いをさせたかっただけなんじゃないか?という気がして仕方がない。

せめてバトルロワイヤルのようなゲーム性があればまだ違う視点で読解することも可能だったか、と思うんですが、単に降って湧いた災難以上のものはなにもなかったですしね。

学校教育の崩壊をサジェスチョンしているとか、もっともらしいことを言う人も居るのかもしれませんが、私には単に、人の悪意そのものをデフォルメして抽出しただけにしか見えなかった。

というか性癖ですよね、これって。

念の為に書いておきますが、私は別にホラーじゃないから駄目と言ってるんではないんです。

スラッシャー映画っぽい演出を流用し、ホラー風の体裁を取り繕いながら、内実は趣味炸裂の虐殺模様一辺倒なのが好きになれない、と言いたいだけなんです。

更によろしくないのが、趣味に走るなら趣味に走るで殺害シーンに多種多様な工夫を凝らして狂いっぷりを発揮すりゃいいものを、どこか真面目に登場人物たちの心理描写や背景等、心砕いてる形跡が伺えること。

いやね、普通に考えてこんなことがあったら主人公の女の子、発狂か施設に保護ですよ。

破綻しまくってるのに物語性もクソもないわけで。

特に相葉晄の役回りとか、もうほんと蛇足で・・・。

それ以前に警察はストの最中なのか?って話だ。

やっぱりこれは稚拙である、ということなんだろうなあ、と思います。

やはり押切蓮介の頂点はサユリ(2010~)だったか、と再認識した次第。

うーん、私とは相容れない一作でしたね、残念。

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