1962 イタリア
監督 ベルナルド・ベルトリッチ
原案 ピエル・パオロ・パゾリーニ
イタリアの巨匠、ベルトリッチの処女作。
深夜の公園にて娼婦を殺害した犯人の特定を、容疑者数人の証言だけで構成していくサスペンス。
似たような作りの作品を過去に見た記憶があるんですが、タイトルを思い出せないですし、62年制作という事実を鑑みるならこちらが先駆けだったのかもしれません。
はて?
まあ、いいか。
物語は密室にて容疑者たちが尋問される様子と、おのおのの回想シーンで進んでいくんですが、同一時間上の出来事をそれぞれの視点で形にする展開が普通に面白かったのは確かですね。
最初はおぼろげにしかわからなかった一夜の出来事が、登場人物の増加とともに徐々に輪郭を帯びていくんですよ。
犯人が誰なのか、それを暴く存在(刑事)が一切映らない趣向も挑戦的だなあ、と思う。
難しいと思うんですよね、ミステリの醍醐味を味わう上で、主導者の存在が不明確って。
集中力がそがれそうなもんですが、不思議と謎解きのスリルを低減させてないんだから大したもの。
群像劇風に雑多な出来事を、さもヒントであるかのように散りばめていったのもうまいと思う。
いい意味で撹乱させられちゃうんですね。
これはそれぞれのエピソードを短編風に立脚させた脚本が秀逸だった、ということなのかもしれませんけど。
いささか残念だったのは、エンディングにて真相が暴かれるくだり。
最後はやっぱり「あっ」と言わせてほしかった、と思うんです。
「お前だったのか!」みたいな。
そうか、あの証言やあのシーンはこのことを意味していたのか!と膝を打ってこそ、サスペンスというもの。
なんとなく流れで、芋づる式に犯人わかっちゃうんですよね。
犯人特定に至るまでの膨大な情報量を含む回想シークエンスは全部余談だったのかよ!と思わずつっこみそうになってしまう。
いやいや、犯罪捜査なんてそんなものだよ、と監督は言いたかったのかもしれませんけどね。
なんだかスッキリしないものが若干残ったりはするんですが、ま、21歳で監督したことを考えるなら、上出来の部類かもしれません。
才気はほとばしってましたね。