ハイ・ライフ

ドイツ/フランス/イギリス/ポーランド/アメリカ 2018
監督 クレール・ドゥニ
脚本 クレール・ドゥニ、ジャン=ポル・ファルジョー

ハイ・ライフ

終身刑や死刑を言い渡された囚人たちの乗り込む、帰還予定のない宇宙航行を描いたSF。

目的は放射線の影響を受ける宇宙船内での出産、育児と、ブラックホールからエネルギーを取り出すペンテローズ過程の実験。

なんとなくもっともらしそうなことを言ってるな、って感じではあるんですが、まあ、ぶっちゃけ穴だらけです。

それ、膨大なコストと労力をかけてまでやるようなことか?という大前提を突き崩せてないのは間違いないですね。

そもそもですね、重大な罪を犯した犯罪者たちを、管理する人間もいないまま宇宙に放り出したところで何かを達成できるはずもなかろう、と私は思うわけで。

だって帰り道の切符がないわけですから。

ご褒美もなしに、なぜ犯罪者たちが唯々諾々と実験に協力するんだよ、と。

24時間毎に実験結果を報告しないと生命維持装置が止められるとか、性欲を抑制する薬を飲まされるとか、小さな縛りは設けてあるんですけど、生きながらえたところでなにもその先にはないことをわかっていながら、彼らがルーティーンワークに従事するとはとても思えなくてですね。

ブラックホールからエネルギーを抽出するにしたって、それを地球に送れなきゃ意味ないわけですから。

つまりは破綻しても別に構わない宇宙実験なわけです。

じゃあ、なんのためにそんなことをやってるのか?って話で。

それがさっぱりわからんのですな。

しいていうなら、閉鎖空間でなにかを観察したいかのよう。

その観察結果を誰が受け取り、なんの役に立てるのか?というとこれまたわからんわけですが。

無意味に生々しく直接的な性描写(受精描写?)が多いのにも辟易させられましたね。

船内では性交が禁じられてるんで、一人の女性医師が人工授精に躍起になってるんですけど、いちいちデティールまで描写していくんですよ。

エロいというより、なんだかもうグロ寸前。

それでいてストーリーに山場がなく、ドラマ性も希薄で、淡々と時間ばかりが経過していくときた。

もう、はっきり言おう、不快で退屈だ。

きっとね、掘り下げていくならあちこちに暗示するものであったり、隠喩が散りばめられているんだと思います。

アート系とでも言っちゃえばきっと楽だ。

エンディングが示唆するものからあれこれ想像を巡らせることも不可能じゃない。

けど、あまりに内向きに観念的だ。

きっと監督の考える性であり、禁忌を宇宙空間に投影してるんでしょうが、理解したい、と思えない時点で私は振り落とされました。

ここまで大風呂敷広げてやるようなことか?というのが正直な感想。

SFというより内的宇宙のメランコリックな吐出って感じですね。

昔のロシアとか東欧の映画を見てるような気分になりました。

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