SF核戦争後の未来・スレッズ

SF核戦争後の未来・スレッズ

イギリス 1984
監督 ミック・ジャクソン
脚本 バリー・ハインズ

もしイギリスが核攻撃を受けたら、その後、どのような惨状が待ち受けているのか?をシュミレートしたBBC制作のテレビ映画。

監督は後にボディガード(1992)で世界的ヒットをとばしたミック・ジャクソン。

いやはや驚きましたね。

ケビンとホイットニーの気恥ずかしくなるようなラブストーリーを撮ったお人が、こんな超硬派な作品で監督デビューしていたとは。

ま、84年のテレビ映画ですんでね、映像に大きく期待しちゃあいけませんが、それでも当時にしては破格の400000ポンドを制作費にあてただけはあって、やたら生々しくリアルな仕上がりです。

まず、私が驚いたのはシナリオ進行の恐るべき緻密さ。

時代は東西冷戦の真っ只中です。

アメリカとソビエトがどのような小競り合いの末、全面核戦争へと突入していくのかを、地域社会の視点から日時を追ってじっくりと描いていくんですが、その専門性が半端じゃない。

政治や軍事、イギリスの非常時における行政の対応等、いちいちなんでこんなに詳しいんだ?と思って調べてみたら、なんと50人の専門家にリサーチして準備期間に1年を費やしたとか。

もはやほとんどモキュメンタリー。

こりゃあるかもしれないね・・・じゃなくて、あったことなのか?!と勘違いしてしまいそうになるレベル。

あまり派手な演出はなく、無骨に淡々とストーリーは進んでいくんですけどね、煽らないからこそ迫真性が高い、というのは確実にあって。

もうね、中途半端なホラーより怖いです。

特に核爆発後、舞台であるシェフィールドの町が炎に包まれ、やがて放射性降下物が降ってくるくだりなんてほとんどはだしのゲン(1973~87)。

どこにも安全な場所なんてない。

それでも生き残った人たちは、食料を得るために、汚染された街に這い出ていく。

追い打ちをかけるように巻き上げられた塵が太陽を遮り、北半球はやがて核の冬を迎える。

育たない植物。

蔓延する伝染病。

体力のない老人や子供から順番にバタバタと死んでいく。

地獄絵図とはまさにこのこと。

それでも人間って、簡単には全滅しないんですよね。

もう勘弁してくれよ、見たくないよ、と思っても一向に映画は終わってくれません。

執拗に、ねちねちと「終わりの始まり」をこれでもかと映し出す。

その後、13年にわたってひたすら衰退していく人類を、物語は刻々と描写し続けます。

そして迎えたラストシーン、ある程度予測の範疇ではありましたが、あえてはっきりと映さないことが衝撃的とも言える「絶望」がそこには渦巻いてます。

誰とは言わないけど北の将軍様は頼むからこの映画見てくれ、と思いますね。

ていうか国連常任理事国の首脳を集めて上映会開け。

原発推進派もついでに見ろ、と思う。

「なすすべがない」ということが実際にどういうことなのか、その目で確かめることができる一作だと思いますね。

映画を測る物差しで言うところの傑作とはまた違うような気もしますが、私達の日常は80年代と変わらず、「核」に依存したあやういバランスの上に成り立っているということをもう一度考える意味でも、一度は見ておくべき作品だと私は思いますね。

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