フランス 1960
監督、脚本 ジャン=リュック・ゴダール
ゴダール長編2作目。
60年に完成するも、アルジェリア問題に関して反政府的だとのクレームがつき、63年まで公開されなかったいわくつきの作品。
フランスの植民地だったアルジェリアが独立運動でもめたのが58~60年で、62年には独立国家としてアルジェリア民主人民共和国が誕生してますから、ちょうど混乱の最中に撮影された映画、ということになりますね。
物語の主人公はアルジェリアの独立を阻止する秘密軍事組織OASの活動家であり、写真家でもあるブリュノ。
このOASってのが極右の武装地下組織で「アルジェリアは永遠にフランス」をモットーに、テロをも辞さぬ過激な運動を展開してた連中らしいんですけど、じゃあ主人公もそっち方面のやばいやつなのか?というと全然そんなことはなくて。
ブリュノ、さしたる思想もなく、割とぼんやりしてます。
元逃亡兵という弱みを組織に握られてるので、仕方なく協力してます、みたいな。
活動に専念するどころか、被写体の女の子ヴェロニカに一目惚れして尻を追いかけ回してたりする。
やがてヴェロニカと恋仲になるブリュノ。
その後、紆余曲折あって、実はヴェロニカがFLM(アルジェリア民族解放戦線)支援者だったと知る。
なのに組織はFLMのロビイストを暗殺しろ、とブリュノに迫る。
さあ、どうするブリュノ?ってのがこの映画の見どころなわけですが、えー先に結論を書きますけどね、恐ろしく盛り上がりません。
ええっ、このプロットで盛り上がらねえの?!と思われる方もたくさんおられるんじゃないかと思うのですが、見ていた私本人もびっくりだったよ、うん。
あえて派手な演出を避けて淡々と撮ってるんだろうな、とは思うんですけどね、ここまで緊張感もスリルも皆無なのはいったいどうしたことか、と。
ゴダール、サスペンス撮れねえのか?とすら私は思いましたね。
なんかもうずっとアンニュイで物憂げなままなんですよ。
危険が身に迫ってるのに、狼狽する様子すらないというか。
常に他人事っぽいんです、ブリュノ。
また台詞回しが勝手にしやがれ(1959)と同様、やたら抽象的で噛み合ってなくて。
色々とやばいことになってるのに、わけのわからんことを延々ほざいてる場合か!と。
エンディングもあっけないまでに唐突。
えっ、なんなの、その没感情気味なあきらめの早さは、みたいな。
余韻もクソもあったもんじゃありません。
うーん、色んな解釈がきっとあるんでしょうけど、私はゴダールの映画作法と内容がうまく調和してないように感じましたね。
平滑な描写の中に、せめて「痛み」のようなものが切実に伝わってくればまた違ったんでしょうが、これ、下手すりゃニヒリストの諦観ともとられかねない。
失敗作じゃないでしょうか。
ヴェロニカ役のアンナ・カレーニナがキュートで魅力的な女優さんだったんで、もったいないなあ、と思いましたね。