ロシア 2018
監督 スビヤトスラフ・ポドガイエフスキー
脚本 スビヤトスラフ・ポドガイエフスキー 、 ナタリヤ・ドゥボーバヤ 、 イバン・カピトノフ
魅入られたものの命を奪う水霊ルサールカの呪いを描いたホラー映画。
とりあえず邦題の「黒人魚」ってのはかなり的外れです。
そもそも人魚じゃねえし。
しかもルサールカが姿を潜めているのは淡水湖だし。
おっぱい丸出しで下半身が魚とか、ファンタジー色とか期待すると手痛い目にあいます。
というか普通に怨霊、幽霊ものと考えていいんじゃないかと。
ルサールカ、外見はどこにでもいそうなロシア人女性ですし。
湖から湖水をしたたらせつつ這い上がってくる、ってのがまともじゃないだけ。
ま、日本の古い民話なんかにもありますよね。
湖に沈められた女が怨霊と化して村に祟りをなすとか、龍になっちゃったりとか。
あの手のお話とそう大きく違いはない。
現代を舞台として焼き直しただけ。
なのでなんら新鮮味もなければ意外性もありません。
やっぱりルサールカの伝承を蘇らせたいのならね、まずルサールカとはなんなのか?を考察しなきゃいけないし、その対処法にも根拠を持たせなきゃいけない。
そのあたり全部「知ってるでしょ?」とばかり監督はスルーしていくんですよ。
いきなり「ルサールカに櫛を返さなきゃいけない」とか言われても、はあ、そうなんですか?としか返しようがなくて。
ロシアでは有名なスラブ民族の神話らしいんで、ロシア人はみんな知ってるんでしょうけどね、そこを前提に物語を組み上げられても他国の人間にとっては絵空事としか映らないわけです。
例えばですよ、日本に置き換えて考えるなら黄泉比良坂でイザナギが髪飾りや桃を投げることによって悪霊を追い払ったから、じゃあ今回も桃を使おう、という注釈が本編に盛り込まれていてこそ理解も及ぶんであって、それ抜きで突然「桃が必要だ!」ってなってもね「おいしいから?」としか考えられないわけですよ。
いちいち興ざめなんですよね。
とはいえ、それらの不手際をすべて補完していたとしてもそんなに面白くはならなかっただろうなあ、とは思うんですけどね。
なんだそれ。
結局、神話をベースにした発想の飛躍がなかったことが最大の難点でしょうね。
CGやVFXはことのほかちゃんとしてて見ごたえあったんですが、それだけでしたね。
うーん、凡庸かと。