運命は踊る

イスラエル/フランス/ドイツ/スイス 2017
監督、脚本 サミュエル・マオズ

息子が戦死したとの知らせを受けた家族を待ち受ける、更に皮肉な運命を描いた人間ドラマ。

考えられたカメラワークや、絵画的なモチーフの多用、唐突なショットを音響との合わせ技でフックとする手法等、あ、こりゃ相当な実力派だ、と見始めて数十分で確信。

イスラエル映画なんて過去に見た記憶が無いんですが、こんなにレベルが高いの?!と驚かされましたね。

主に会話劇が中心となる前半の、登場人物たちの台詞回しも上手。

ほぼ室内だけで物語は進行していくんですけどね、飽きないし、何が起こってて、どんな背景があるのか、会話を追ってるだけで全部わかるんですね。

キャラクターの内面までをも匂わせる緩急あるドラマを「息子の死の知らせを受け止める夫婦の様子」だけで表現していくんですよ。

高い演出力がないとこんなことはできない。

なんだこれ、いったいどこへ向かおうとしてるんだ、この映画?!とドキドキしながら見てたんですが、えー、結論から言っちゃうとですね「恐ろしく質は高いのになんだかよくわからない場所に着地した」というのが本音ですかね。

戦争を題材にした映画にありがちな「息子を戦場に送らざるを得ない紛争地帯の悲劇」を描いてるわけでもないですし。

安直な反戦映画でないことはおそらく誰が見てもわかる。

かといって、認知症の母がホロコーストの生き残りであるとか、母と主人公の関係性が戦争を抜きに語れないものであることも事実。

主に夫婦の倦怠をじっくり描いてる気がしなくもないんですが、それで片付けるには乱暴すぎますし。

結局ね、一言で簡単に言っちゃうなら「運命のいたずら」に翻弄されました、以上、なんですね。

だからどうしたんだ?と。

運命のいたずらに翻弄されたことによってどのような出来事が主人公の身にふりかかったか、を描くのが物語であって、運命のいたずらそのものは物語の装飾にしかならないでしょ?と私は思うわけです。

そこに目線を凝らされてもですね、宿命論者じゃないんだからなんの回答も導きだせないですよ。

あまりに悲運だった、としかいいようがない。

寓話的なグラフィックの挿入や、エンディングの微妙な気味悪さ等、最後まで退屈はしなかったんですけどね「いや、これオチてないから!」というのが率直な感想ですかね。

起承転結の転で終わっちゃってる感じ。

なまじ技術が高いだけに、本当にそう断じていいのか?なにか見落としてないか?と不安もあるんですが、現状私にとってこの映画は第一部完の状態ですね。

うーん、ヴェネチア審査員グランプリ受賞かあ・・・わからん。

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