パンク侍、斬られて候

日本 2018
監督 石井岳龍
原作 町田康

パンク侍、斬られて候

あんまり熱心に邦画をチェックしてないものだから、石井聰互がいつのまにか石井岳龍に改名してた事を知らなくてほんとにびっくりしました。

ええっ?!狂い咲きサンダーロード(1980)や爆裂都市(1982)の監督がこんな映画撮るの?みたいな。

そりゃ逆噴射家族(1984)みたいな映画もあったけどさ。

なんせ私のイメージは最新でエンジェル・ダスト(1994)なんで。

どっちかというとインディーズの雄みたいな。

それがまさかクドカンの脚本で綾野剛主演の娯楽大作を手がけるとは。

いかんなあ、20年ほどの空白があるよ、私の中に。

しかも原作が町田康ってのがまたすごい。

あの独特なふざけた小説を映像化できるのか?と。

本編の原作は読んでないんですけどね、他の諸作で作風は知ってるつもりですから。

パンクってことで根っこの部分に共通点はあるのかもしれないけれども。

その割にはアナーキーな匂いが、映画から立ちのぼってなかったりはするんですけどね。

私の感触ではクドカン臭が強いですね、この作品。

なんせ町田康ですから、彼の執筆した時代劇に時代劇らしさとか求めるほうがそもそも大間違いだとは思うんでデタラメなのはかまわないんですが、台詞回しのふざけたノリがどうにもテレビっぽいというか、スベり気味というか。

おちゃらけにも鋭利さは必要だと思うんですね、私は。

なんだか宴会ノリっぽいんです、全体的に。

シラフにかえった途端、急に恥ずかしくなる、みたいな。

それがどうにもしんどい、ってのは私の場合、あった。

ま、筋立ての狂いっぷりは悪くない、と思います。

なんで猿????とさすがの私も驚きましたし。

いったいこの狂騒劇はどこまでエスカレートしていくんだろう、とドキドキするものはあった。

カルトなSFコメディっぽい趣すらあるな、と幾分感心しましたし。

ちょくちょく毒を吐いて現実とシンクロさせる手法もいい。

ただねえ、ここまで世界そのものをぶっこわしにかかりながら、結局突き抜けないのがどうなんだろう?と。

どんでん返しをオチとするのはストーリーの方向性から言って違うだろうと。

腹ふり党の信仰がリアルを崩壊させるなら、崩壊するリアルの行く末こそを描写しなくてはならなかった、と私は思うんです。

そこが欠落してるんで、見終わったあとになにも残らない。

で、この続きは?って感じ。

石井監督の大仰な演出も幾分空回りしてるように感じられましたし。

なんでこの場面でこんなVFX?と頭をひねること数度。

なんとかまとめなきゃ、と思ったのかもしれませんけどね、そもそもが不条理に規格外なんだから、いっそのこと観客置いてけぼりで最後は暴走すりゃあよかったのに、という気もしますね。

それでこそパンクじゃないかと。

どでかい打ち上げ花火をあげたはいいが、夜空に花を咲かせることなく音だけで不発だった、みたいな一作でしたね。

嫌いじゃないですけど消化不良。

浅野忠信や豊川悦司のキャラはよかったんですけどね。

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