イップマン外伝 マスターZ

香港/中国 2018
監督 ユエン・ウーピン
脚本 エドモンド・ウォン、チェン・タイリ

イップマン外伝 マスターZ

イップ・マン継承( 2016)に登場した詠春拳の使い手、チョン・ティンチを主役に据えたスピンオフ作品。

主演は本編に引き続きマックス・チャンが努めてます。

ついに主役をはるようになったか、と思うと実に感慨深いですね。

ドラゴン×マッハ!(2015)で私は予言したはずだ、マックス・チャンはこれからくると。

ドニー・イェンの後釜に座るぐらいの気持ちでこれからは頑張ってほしいところですが、マックス・チャンも45歳とあんまり若くないんで、今後出る作品は選んでいって欲しいなあ、と思いますね。

とりあえず最初の足がかりとしてイップマン外伝、ってのは幸先良かったかも。

イップマンのファンをごっそり囲い込めますしね。

で、肝心の作品内容ですが、ま、近年のユエン・ウーピンらしい一作かな、と。

可もなく不可もなくわかりやすいカンフーもの。

「イギリスの統治下におかれた時代に、横暴の限りを尽くすイギリス人警察高官とその仲間を正義の名のもとにこらしめる」という物語の構図はジャッキーの作品なんかでもしょっちゅうやってましたしね。

さして新鮮味のある題材でもない。

やっぱりチョン・ティンチを主役とするなら、一度捨てた詠春拳を再び拳に宿すまでのプロセスをですね、幼い一人息子との親子愛を交えてもっと劇的に描けたはずなんですよ。

そのあたりがどうしても弱いのは、いかにも往年の香港映画というか。

残念ながらイップマン本編に匹敵する出来とは言い難い。

あと、格闘シーンもね、ワイヤーの使い方がいかにもユエン・アクションチームで。

ドニー・イェンを追い続けてきた私の目には、一世代前の動作設計に見えて仕方がない。

重力無視しすぎなんですよね。

さらには、マックス・チェンの演技がね、どの場面でもほとんど同じなのがなんだかなあ、って感じで。

ずっと苦虫を噛み潰したような仏頂面。

これは演出及び演技指導の問題も多分に含まれてるように思うんですが、もし感情を一切表に出さぬことがクールだと思ってるならそりゃ大きな勘違いだと私は思いますね。

これじゃあ苦悩も激情もなにも伝わってこない。

この手の映画でそこを伝えられないのは駄目でしょう、って。

ただね、これでもかとばかり、マックス・チャンのアクションシーンをふんだんに盛り込んでくるサービス精神たっぷりの構成が、小賢しい批判をたやすく吹き飛ばす勢いだったことは私も否定できないです。

なんせミシェール・ヨーまで引っ張り出してくるんだもの。

そりゃ古い香港映画ファンは胸踊りますよ。

クライマックスにおける巨漢肉達磨との一騎打ちも見応え充分。

身長差何センチあるんだよ!と。

あんなクソバカでかいやつ相手に詠春拳炸裂なんてやられちゃったら、さすがに血も沸騰するし、拳を突き上げたくもなる。

結果、いつもの香港映画に終わってることは間違いないんですが、マックス・チャンの知名度を上げる意味ではこれもまたよし、といったところでしょうか。

線が細いながらもシャープで身のこなしがやたらと軽い彼の動きをたっぷり堪能できる一作ではありましたね。

香港映画界では珍しい男前のアクションスターだと思うんで、大成してほしいですね。

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