アメリカ 2018
監督、原案 アルバート・ヒューズ
2万年前のヨーロッパ大陸を舞台に、仲間の部族とはぐれたがため、たった一人で生まれ育った村へと帰らねばならない羽目に陥った少年を描く冒険ファンタジー。
えーと、2万年前ってメソポタミア文明より前?後?などとすっとぼけた事を考えながら見ていた私ではありますが、どちらにしろ、そんな大昔のヨーロッパ大陸の社会や文化がどうなってたのかなんてまるで知らないんで、こりゃわかったところでどうしようもねえな、とひとり得心。
日本の縄文時代のことですらおぼろげにしか知らないのに、ヨーロッパとか知るかよ、って話だ。
なのでこの作品の描く部族のあり方や暮らしぶりが歴史的検証に基づいたものなのかどうか、さっぱりわかりません。
監督はリアリズムにこだわって、登場人物たちが話す言語を独自に創作したほどだったらしいんですが(公開時は英語で字幕スーパー)、それがすなわち真に迫っているか、というと一概にそうとは言い切れないようにも私は思います。
なんせ昔過ぎて、想像であれこれ補完していくしかない部分もいっぱいあっただろうと思うんで。
そういう意味じゃあ神話的ファンタジーと捉えたほうが座りがいいように思いますね。
物語世界の外堀を埋めることに関しては気を使ったんだろうな、と考えるぐらいでちょうどいいかと。
シナリオは至極シンプル。
私が冒頭で書いたことがほぼすべてだったりする。
少し付け加えるなら、村へ帰るための道行きに、同道者として狼が付き添います。
実はその狼こそがこの物語の核心部分。
少年と狼が少しづつ心を通い合わせていく様子をじっくり描くことに物語の主眼が置かれている。
つまりは、人間の良きパートナーとしての存在ある犬種は、原初においていかにして人と出会ったのか?がこの映画の大きなテーマなんですね。
なのでどっちかというと、スリルと興奮に満ちたサバイバル・アドベンチャーみたいな指向性はあまり顕著じゃないです。
いかにして食料を調達するか?とか、野外で何日も過ごすことの過酷さとか、割とおざなりなんですね。
さらには最も肝心な村までの距離であったり、気候がどうなってるのか、高地なのかそれとも湿地なのか、まるで言及されることがないので、旅の大変さが全く伝わってこない。
狼と少年の触れ合いに興味が持てなければ、おそらく振り落とされてしまうこと間違いなし。
なんせ他の人間、全くでてきませんから。
オープニングから別離までのシークエンスと、エンディングを除いて少年と狼しか登場しません。
なんだかずっと一人と一匹でねちねちやってる。
DVDスルーされた原因はきっとそのあたりなんだろうなあ、と。
ただね、これCGなのか本物なのかよくわからないんですけど、狼、やたらかわいいんですよね。
私はどっちかというと猫派なんですけど、この映画見てると狼もいいなあ、なんて思えてくる。
ていうかこれもうワンコやんか、と。
野生の猛々しさの合間に見せる従順な態度が、なんだかやたらと保護欲をそそるんです。
わしわしと頭をなでたくなってくる。
実は愛犬家のための映画、というのがこの作品の内実かもしれません。
物足りない部分はたくさんあるんですけどね、狼が愛らしいんでまあいいか、と。
あ、あと序盤で崖から脱出するシーンはなかなかのアイディアだったな、と思いました。
それぐらいかな。
嫌いではないですね。